2011.05.08 Yの悲劇
Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)
(2010/09/25)
エラリー・クイーン

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評価 5(飛びぬけ)

新訳ということで何十年ぶりかで読んでみた。
最初に読んだ時に
(犯人びっくり!!!)
だったので、今回その犯人が最初から分かっている状態でどうだろう、と思ったが、これはこれでとても面白かった。なぜなら、犯人がいかにフェアーに描かれているかというのが最初からあった、というのがよくわかったからだ。
また犯人がなぜそうなったか、という部分はさっぱり忘れていた。こういうことだったんだ!!というのが新鮮だった。

なんといっても強烈なハッター家の人々。
その強烈さに辟易しながらも、ぐいぐい一人一人の人物に引き込まれていった。
それぞれの人の人物描写が見事であり、浮き彫りになってくるのだ。
父が事故で(と思われている)死亡したあと、
聾唖であり、しかも目も見えないという苦悩の娘を可愛がっていた母さえも殺される。
更に、そのハンデを持った娘がターゲットになっているのかもしれない、というねじれた構造がある。
犯人を触ることでしかわからない娘。
その娘の感想はまさにハイライトであろう。
またドルリー・レーンの活躍も目覚しく、ハムレット荘の絢爛豪華な様子とか、レーンの言葉の一つ一つの重みがある。

以下ネタバレ
・非常に時代を感じる、と思ったのが、この場合の犯人の子供の年齢が13歳であるということだった。
凶悪犯罪が低年齢化している現在、私の頭の中でもっと低い年齢だというように変換されていた。
ただ、8歳ぐらいだと、あのヨーク・ハッターの小説(犯罪の基盤となった小説)に沿って計画をする、というのが出来ないだろう。ここらあたりが難しいところだ。

・私が忘れていたのは
男の子が犯人になりえた、そしてハッター家の人たちが全員異常である、という原因が
ハッター家の当主の奥さんが(これまた強烈な人)梅毒であって
その病気が因子としてあると言う遺伝病であると言うことだった。

・子供がやっていることなので、
小説に沿ってやっているつもりでも、破綻が出てきて、更によくわからないところは自分なりの解釈をしたりしている。
特に、面白いが、英語ではなくて残念と思ったのが
マンドリンをなぜ凶器として使ったかということだった。
instrumentの使い方で、blunt instrument(鈍器)と小説にはあるが子供は分からず、instrumentから楽器と思いつく。

・子供が犯人、と思った視点で読んでいくと
この小説、最初の方から実にこの殺人者の子供が、残虐な子供で手に負えない子供かというのがちょこちょこ描写されている。弟を虐待するわ、動物を苛めるわ、一見手に負えないいたずらっ子として描いている点が素晴らしい。