忘れられた花園 上忘れられた花園 上
(2011/02/18)
ケイト・モートン

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忘れられた花園 下忘れられた花園 下
(2011/02/18)
ケイト・モートン

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評価 4.4

いいところもたくさんある小説だった。
良い小説悪い小説という話だったら、間違いなく良い小説だろう。
中に織り込まれた童話の意味も重い。
翻訳本として読みやすいことこの上ない。
・祖母ネルの秘密
・三方向から描く描き方
・ディケンズのデイヴィッド・コパフィールドやオリヴァー・ツイストを思い出すイライザの幼少時の記録
・バーネットの秘密の花園を思わせる花園の美しさ
・壮大な館に住む人間達の秘密の数々
・イライザが親友(実際は従姉)と思った館の当主の娘ローズの恋の顛末と結婚

・1880年代から1913年は館の女主人とその娘と連れてこられたイライザ視点
・1975年あたりはネルのルーツ探し(ロンドンとコーンウォール)
・2005年あたりは、カサンドラ(ネルの孫娘)がネルからもらった家をイギリスに訪ねていく話(と恋の話)
と3つにわかれている。

この小説は、
「1913年なぜ一人の少女がが一人ぼっちでトランクと共にロンドンからオーストラリアの船で置き去りにされたか」
という謎を追っている。
この少女は引き取られた家でネルという名前を付けられるけれど、ある日父に真実を告げられそこから人が変わってしまう。そして自分のルーツを探すのだ。これに関して生涯何も語らず、死後カサンドラにある家と庭を残す。
そこには名門マウントラチェット家の物語が隠されていた・・・

生みの親、育ての親と言うテーマが幾重にも重なって響き合っている。
子供がいない親、子供がいる親、親のいない子供、親がいてもいない同然の子供、とそれぞれの立場を見ても興味深い。
この話の中で私が面白いと思ったのは、小さいクリスチャンと若き日のネルが出会っている場面だ。
こういう仕掛けのようなものが随所にあるので、全体を見ている読者としては、
(ここがああなのだな・・)と思えてそこはとても楽しい。

また美しい枠に収められている、童話に託された隠喩というのも面白い。

・・・
非常に面白い反面、複層の話になっているのに、人物描写がやや甘い。
たとえば、当主の異常な性癖とかこれはこのまま放置なんだろうか。異常さが何か引き起こすのか、と思ったがそれもそこまでではなく、なんだかここだけ浮いている、話の中で。
またイライザが弟の格好をして(双子の弟が不慮の事故で死ぬ)という出だしの方にあるが、これもさらっと終わっていてあとでもう一度この話が出てくるものの、立ち直りの過程というのがよく見えない。新しい館でローズと出会ったのが立ち直りではあるのだろうが・・・・
更にもっと言えば、ローズに対するイライザの気持ちは、これは単純な愛なのだろうか。異性愛に対するような愛なんだろうか。ここまで・・・と思ったのだった。
また意外性ということで、なぜ置き去りにされたか、という部分がどうなのだろう。
またネルが真実を父から聞かされた時に、なぜこの家族を心の中で捨てたのだろう。育ててくれたのに。

以下ネタバレ
・ローズが子供が出来ないがために、イライザが産んであげる。
しかも、当時なので、人工的にではなく本当に男性と交わって。
ここらがそこまで思ってあげる気持ちと言うのがどうなのだろう。
更にそのあと子供を取り上げられ、拒絶されたイザベラの気持ち描写というのがもっともっと描かれても良かった気がした。
・またナサニエル画家とイライザの気持ちはどうだったのだろう。
このあたりが少ないので、薄っぺらくなってしまっている。
・ヘンタイの当主は妹に(死んでしまった)異常な愛情を持っている。
その妹の子供のイライザを探し出してくれたのは嬉しいけれど、この部分だけこの話の中で浮いている。