アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)
(2011/04/30)
フィリップ K.ディック

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評価 4.8

面白かったが・・・・
読んだことある作品ばかりだなあ・・・というのが感想の第一に来る。
この経緯は最後の解説にもあるけれど、読者泣かせだ、ばらばらとこうして何度も短篇が編まれるというのは。
読んでない作品を読むために、既読がほとんどの作品集を読むというのが(もっと言えば買うというのが)どうなのだろう。
それとも、まだこの作品が現存して読める、ということを喜ぶべきなのか・・・
次巻以降も買って読むとは思うものの、これで決定というような本を作って頂きたい。
面白かったのは、既読も含めて
凍った旅、ウーヴ~、にせもの、そのあたりだ。

表題作のアジャストメントは、映画化されるので、と思って初めて読んでみた。
これは、ミダス王の物語のようだ。
触ったものが金になるのではなく、「もう既に」砂になってしまっているのだが・・
ちょっとした日常の裂け目から別世界が広がっていくというところと元に戻るところが読ませる。
自分だけがある世界を味わう恐怖、というのがよく出ていると思った。
ラストどう決着を見るかと思ったら、このラストも面白い。
ただ、この短篇をどうやって映画にするのだろう、という興味もまたある。

「アジャストメント」
「ルーグ」最初のところで犬が話す話、と思ったら、後半全く違った展開が来る。

「ウーズ身重く横たわる」既読の中でも特に印象が深い一作。食べるものがしゃべるってどんなに気味が悪いだろうと想像するだけでうっとなる。更にラストの、うっが待ち受けている。

「にせもの」映画化もされた有名作品。これも自分の確固と思っていた現実ががらがらと崩れる話で好き。
「くずれてしまえ」最後の三行に心打たれる。
「消耗員」短いけれどぴりっと光る作品。刺客の言葉を誤解したところが読ませる。

「おお!ブローベルとなりて」賢者の贈り物とかを思った、ラストに。なんて皮肉な結末。
「ぶざまなオルフェイス」SF好きの人にはネタ的にたまらないものがあるだろう。


「父祖の信仰」場所がハノイってところが既に怖く、放射能症の治療とか何だか身につまされていると共産主義も出てきてそしてラストのあることが私にはとても怖かった。
「電気蟻」一件落着、と思ったそのあと、というラスト三行が誠に怖い。

「凍った旅」とても好きな作品。懐古趣味に満ち溢れていて、何度でも読み直したい。
「さよなら、ヴィンセント」人形物、なので・・・人形物(という分野があるかどうか知らないけれど)に食指が進まなかった。

「人間とアンドロイドと機械」エッセイだが大丈夫?と思ったと同時に(かなりあちらに行ってる感じがした)、天のろくろを読んでないので、是非是非読みたいと思ったエッセイ(そこが主眼ではないのは分かっているものの)