2011.05.17 精霊たちの家
精霊たちの家精霊たちの家
(1994/05)
イサベル アジェンデ

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評価 5(飛びぬけ)

震えるほど面白い読書体験だった。
百年の一族の物語をつぶさに拝見してひれ伏した、という気持ちでいっぱいだ。

最初のところで、緑の髪の超絶に美しい少女ローサというのがまず目を惹く。
ローサの描写があまりに美しいのでこの世のものとは思えないなあ・・・と思っていると本当にこの世のものではなくなってしまう、それも実に不思議な死に方で。
遠くの街でローサとの結婚のみを夢見て出稼ぎしている婚約者を残して。
そこからどちらかと言えば、ローサの妹の千里眼の力を持つ(予言が出来る)妹に話はシフトするのだが・・・

・妹クラーラが口がきけなくなってしまう、なぜなら姉ローサが父の代わりに毒殺された解剖された姿を見るから、というのがまず強烈だ。
・またクラーラは未来を見ることが出来るほか、塩のつぼを動かすなどのいわゆる念動力を持っている。
そして自分が死んだ姉ローサのかわりに彼女の婚約者であったエステーバン・トゥルエバと結婚すると未来を見抜いてもいるのだった。

この物語の中で、一瞬クラーラの椅子のまま飛ぶとかファンタジックな面に目が行くけれど、それよりも全体を通してみると、エステーバン・トゥルエバという男の特殊な造型が非常に細かくよく出来ている。
打ちのめされるくらいにエキセントリックで、あまりの激しさに失笑さえ起こりそうな感じだ。
杖で家の中のものをばんばん叩き割っていく短気さもさることながら、結婚の時にクラーラの可愛がっていた犬の「剥製」を贈ってクラーラを卒倒させるという突拍子のなさも持っている。
自分の娘に手を出した男の手を斧でぶった切る、という荒業も持っている。
使用人に対してはあくまで冷たく働きづめにさせ、娘と言う娘を犯す。
なので、農地解放のときに、今度は農民から逆襲される(が、このあとまた時代が変わり、エステーバンの出番になる。)
エステーバンが怒るたびに、(また怒った怒った!)とわくわくしたのはなぜだろう。
エステーバンの癇癪玉の破裂を見るたびに、どきどきしたのはなぜだろう。
どこかで彼を憎めない人間としてみていたからだろう。
そして、彼の意識していないところで、使用人が産んだ息子、がラストの方で意外な手を伸ばしてくる・・・

地主と小作問題、という社会的背景も盛り込みながら、話は子供から孫に繋がっていく。
物語の中でどの話も沸き立つほど面白く、無駄な話というものが何一つない。
そしてその中に善良さ、邪悪さ、などが混沌とし、生きとし生けるものの大きな営みというようなものを肌で感じる大きな大きな一作だった。