2011.05.17 ピエタ
ピエタピエタ
(2011/02/09)
大島真寿美

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評価 5(飛びぬけ)

ああ・・・なんていい小説なのだろう。
溜息が出るほど素敵な作品だった。
大島真寿美の作品の中でも一つの到達点なのではないだろうか。

ピエタ。
それはヴェネツィアの慈善院である。
ここの合奏・合唱の 娘たちに一人の楽聖が音楽を指導する、その名がヴィヴァルディ・・・・・
そして年月が経ち、ヴィヴァルディの訃報が教え子のエミーリアのもとに届けられた。


貴族の娘であり長じてピエタの寄付者の一人ヴェロニカがピエタの合奏合唱の輪に入っている。
ヴィヴァルディが亡くなった時に、ヴェロニカが自分が裏に詩を落書きした楽譜がどこかにあるはずなので探して欲しい、とエミーリアに依頼する。
エミーリアは本来はピエタを出られない人間であるけれど、この行きがかりで、外に出てヴィヴァルディゆかりの人たちと出会っていくのだ・・・・

「消えた楽譜」とヴィヴァルディとの繋がりのある人たち、というのをモチーフに、話は静かに進んでいく、激しさを内包しながら。
エミーリアがかつてしたこと。
かつてあったこと。
ヴィヴァルディが皆に残したこと。
それが、大作曲家ヴィヴァルディを軸に薄紙を剥がすように徐々に明らかになってくる。
高級娼婦クラウディアとの会話、金持ちの寄付者ヴェロニカとの関係、ヴェロニカの兄の素顔、ピエタの親友のアンナ・マリーアとの関わり。
本来会うはずのない人たちが交錯し、そこに別の人生の光と影を見出していくエミーリアがいる、自分自身の報われなかった恋愛を織り交ぜながら。

後半である歌が、歌われれる。
文字のはずなのに、そこから歌がこちらに響き渡ってくるような錯覚すらしたのだ。
生と死、愛と憎しみ、聖と俗、そのようなものたちが、ヴェネツィアの熱気を帯びた仮面の祭りを通して一気に高まりそして絡み合っていく様が美しい。
一旦親から捨てられた子供達の新たな生。
そこから芽吹くように生まれてくる愛。

むすめたち、よりよく生きよ。
よりよく生きよ。

この言葉が重く心に響いてくるのであった。