アンダー・ザ・ドーム 上アンダー・ザ・ドーム 上
(2011/04/28)
スティーヴン・キング

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アンダー・ザ・ドーム 下アンダー・ザ・ドーム 下
(2011/04/28)
スティーヴン・キング

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評価 4.8

読んでいる間沸き立つような気持ちになり、これだけの登場人物がぱっと頭に入ると言う描き方は、相変わらず熟練の技だと思った。(人のみならず、犬までも生き生きとしている)
また伏線と言うのがあり、その伏線が後半でぐいぐい回収されていく。
そのあたりも読んでいて面白いなあと思ったのだった。
バービーが、最初の方で車に乗せてもらえなかった、という場面があり、そこなども非常に印象深い。
これがもし乗せてもらったならば。
もしドームが出来る前にここから脱出したならば。
それをバービーとともに何度も何度も読者も思うからだ。
また、途中で、頭のいい少年がドームに向かって銃を発射する、という痛ましい事故がある。
これなども、一つのエピソードかと思っていると、最後までこれが響いてくる話がある。
ここもまたぐっと来たのだった。

また、とても興味深いと思ったのは、神と言うものに対するそれぞれの気持ちだ。
・悪の権化に化した(前からそうだったが、小物感があったが、ドーム出現により巨大な権力を持ち始める)ビッグ・ジム・レニーは何度も何度も神に祈る。
神に一番遠いような存在が祈っている。
・ここでまたビッグ・ジムに対抗していく勢力の方は、といえば、決して神に祈らない。そこには牧師(パイパー・リビー)までいるのに彼女まで(女性で、数年前の事故で夫と子供を亡くしてから神への信頼を失ってる)神へ決して祈らない。
そしてこの戦う人たちが見つけたものは・・・・
神とは一体何なのか。
この人たちにとって何だったのか。
この命題を突きつけられたような気もした。

三人の子供達が、「ドームの発生源」を見つけに行く旅、がスタンド・バイ・ミーのようで楽しい。
(特に天才少年ジョー・マクラッチーが可愛い)
発生源が子供達に見せる悪夢であり予知夢、大人から引き出す過去の記憶ととかげ頭の未知の生物なども読んでいてわくわくしたところだ。

そして最後の落としどころは、どうやって決着を見るのか、破壊されたほぼ死滅状態の熱したガラスの中のような場所でどうなるのか、というのでやはり読みでがあったのだ。

・・・・・
話の構造としては実に単純な話だ。
・ある町にわけわからずドームがかぶせられる。
・外の世界と断絶させられ、空気もわずかにとおるばかりになっている。
・上からのミサイル攻撃も奏を功さない。
・閉じ込められる町の人たちに、独裁者が現れる。
・独裁者はビッグ・ジム・レニー。そしてその息子のジュニア・レニーも特別警察官になり暴虐の限りを尽くす。
・恐怖に慄く人達、人間の軋轢、絶望、そしてわずかに見える希望・・・


新聞社の編集発行人のジュリアも権力に屈しないで新聞をひたすら作っていく姿が小気味良い。
作られたスーパーでの暴動、作られたパニック、そういうのに立ち向かっていく秘密組織のようになった抵抗勢力もまた読んでいて頑張れ頑張れという気持ちになる。

・・・・・・・・・・・
ただ・・・どうなのだろう。
やや安直に人が死んでいくなあ・・と思ったのだった。
パニック物だから仕方ないと言えば仕方ないけれど、子供すら軽く死んでいくのが小説とはいえとても気になったのだった。
またなぜ、ドームが出来たのか。
これの解決の「やり方そのもの」場面は面白い。
だけど、なぜ、というのが、これかこれなのか・・・という気持ちもまたよぎったのだった。
またラストこれなのか。
バービーの活躍場面が牢屋にいる時間が長すぎるため、非常に短いと思ったのだがどうなのだろう。
バービーがもうちょっと動いて欲しいなあと私は思ったのだ。
悪の権化のビッグジムは、もっとカタルシスのある終焉を迎えて欲しかった。

・・・
実に映像化しやすそうな話だ。
特殊なんとかを使って、この話を作れば、ドラマでも映画でもヒット間違いなしなのだろう。
(と思ったら、発売当初からもうその予定があるらしい・・)

以下ネタバレ
・蟻を上から見ている人間。
この場合、ドームを見ている地球外生物が子供で人間が蟻という構図になっている。
最後のところで、ジュリアが「彼女」に訴えかける。
発生装置の元で。
ここが私は面白いと思った。
同時に、この発想が(人間を外から見ている地球外生物)割合あるものだと思うので、そこは驚き度が少なかったかと。そして祈ったことで開くというのが、解決としてありといえばありなのだが・・・

・頭のいい少年が最初の方でドームに穴を開けようとして、跳ね返った銃弾に自分が死ぬ。
この母は自殺。
それで落ち込んでいた少年の兄オリーは
次は父の自殺を発見。
これだけ悲惨な出来事があったのに、オリーは最後の方で、ドームのへりで、向こう側にいる名も知らなかった二等兵に励まされながら生き残る。これがとてもいいエピソードだと思った。

・なんせ、子供が無駄死にしすぎだと思う。
最後のところで、生き残ったのが、バービーとジュリア中心で、ベニードレイクは死亡、エイダン・アップルトンも死亡・・・アリスは助かったものの・・・ジョーは助かったものの・・・

・レイプ場面がとても辛かった。