ダイナマイト円舞曲 (1980年) (集英社文庫)

評価 4.8

なんておしゃれで、わくわくしたロマンに満ちていて楽しい推理小説なんだろう。
なんて意外性に満ちた推理小説なんだろう。
そこここに推理小説の薀蓄もありそこも楽しめるし、映画の薀蓄もまた楽しめる。
おとぎ話の要素もさりげなく入っている(そもそも最初から「青髭」だし)
一粒で三回も四回も楽しめる小説だった。
これが絶版なのが本当に悔やまれる。

話は、ありえない!のだが、あったら面白いだろうな!という枠組みがまずある。
それは、
「自分がかつて留学していたパリで親友だった女の子が、あるヨーロッパの国の王妃になったと言うこと」
があり
「日本人の「自分」が招かれて、その宮殿に行ったら、そこでは既に王妃が7人(!)死んでいた。自分の親友も顔色がどうやら悪い」
という状況だということだ。
これだけの暗い状況なのにくすっと笑えるのは、ひたすらこの日本人の主人公がお転婆で、可愛げがあるからだ。
よく動くしよく食べる、そしてそれでいて親友を何とか助けようと奔走する。
ヨーロッパの風習にうっとりしたり、たまに自分を日本人だからと自虐に走ってみたり・・・
彼女の思考というのがぴったり読者と一致しているのでそこをトレースしていくようで誠にそこも読んでいて楽しい。
豪奢な宮殿の様子、慇懃無礼な侍従長、前妻の娘息子、女官、舞踏会、宮廷画家、夫の母(つまり女王様)、とこれでもかこれでもかとヨーロッパ貴族の様子が、日本人の目を通して描かれているのだ。
それは作り物めいているかもしれないけれど、実に活写されているのだ。


なぜか親友クレマンティールは王ブビイを愛している(青髭なのに・・・どこが良かったのか?)
なぜか親友は幸せなのにもかかわらず顔色が悪い。
なぜなのだろう・・・

・・・
めくるめく舞踏会があり、そこでのお茶目なやり取りがあり、草履をなくし(ここはシンデレラを思い出す)、日本の着物が汗まみれになるほどゴーゴーを踊りまくり・・・
そして日本から来た「自分」が聞いたのは、陰謀の蠢く混線した電話だった・・・
Dとは一体誰なのか。
水車小屋に生まれた男なのに、統率力ある男とは誰だったのか。

最後まで驚きに満ちた小説だった。

以下ネタバレ
・王女達を殺したのは侍従長。
そして侍従長と王とが立場を交換していたのだった。

それはロンバルトというこの国は常に王政から共和制に行きそうな危うい状態だったからだ。
常に王位継承者が狙われているという国だ。
王位継承者の暗殺を恐れた老公妃が、ブビイの父の処刑を免じる代わりに、年恰好の似ていたブビイを王にして、王位継承者を侍従長にした。
そして侍従長はやり放題。
だから親友の愛した男ブビイは、王という名前ではあったが、殺人はしていないし「名目上」の結婚をしただけの人で、クーデターを企てたD。

立場交換というところが私には驚き。
侍従長が何かあるというのは感じていたが・・・

・草履は最後に見つかり、これをプレゼントするというオチがついている。

・その部屋に入ると気分が悪くなるという仕掛けは、絵だろうなというのは想像が出来た。
ただ、途中でいちごを食べて、ポールが死ぬ。
ここで混乱。
もしかして、絵ではなかったのかという気持ちに陥ったが・・・