ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)ヴァレンタインズ (エクス・リブリス)
(2011/04/06)
オラフ オラフソン

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評価 5

大変好みの小説だった。
月別のタイトルになっている短篇集だが、どの話も男女のやり取りというのがある。
それは夫婦であったり、夫婦になる前の恋人であったり、形は様々なのだが、男女と言うのがあらゆる形で登場する。
10月のみ、男と男の物語だけれど、これも女は介在しているのだ。

文章も簡潔で淡々としているのだが、どの話にも驚きというのがある。
一枚の紙を切っ先で切り開いたような驚きが、ぽっとどの作品にも存在しているのだ。
それは「意外性」という驚きもあるが、「こういう思考をしていたのか」という驚きもまたある。
あるものの「裂け目」というのがばっと見えてくるのだ、読者に。
そこが非常に面白い。

この中で
一番好きなのが、
子供が湖で溺れて、それを近所の人が助けてくれた顛末の4月だ。
この場合、一緒にボートに乗っていた夫の行動が、妻の最後の一言に繋がる。
なんて怖い話なんだろう。
ネタバレ→湖で溺れた時に、夫は息子の手を離した

5月は、長年連れ添った妻がある告白をする、ということで始まる。
告白自体、仰天というものだが、満足のいく結婚生活と思っていた夫はあれよあれよと言う間に別れることになり、ガレージセールにまでなり、そこであることが起こる。
夫の心の感情の動きが緻密に描かれていて(それでいて淡々と)ここが実にわかる!と思った。
ネタバレ→夫が最後の最後で感情を爆発させて、車を出し滅茶苦茶な運転をし、おそらく(ここははっきりとは書かれていない)妻をひき殺す。この暗転ぶりがすごい)

2月
の意外性といったら!
修復しようとした夫婦がドライブをする。
そしてそこで突然妻が、浮気をした夫の相手の家を見たいと言い出す。
渋々ながら連れて行くのだが・・・
途中にある伏線があって、最後の一撃となる。
ネタバレ→途中で一階下の女性が妻の友達で話を聞いてくれると言う描写があるが、最後に夫の浮気相手だとわかる驚きが

また3月は身につまされるような作品だった。
スキー場に来た夫婦。
彼女達は豪華なスキー旅行を楽しもうとするが、ここで運悪く夫がジムで足を怪我する。
それでスキーをするのは妻のみ。
夫はその間に知り合いが出来るが、ついついその知り合いの子供を見ているうちに「いもしない自分の子供」の話をし始める。
以下ネタバレ→妻が「いつもこういうことをしてるのか」という場面がとても怖い。そして夫がついつい架空の子供の話をしてしまった、というのもまたわかるのだ。1月
かつて愛し合った女性のことを偶然知り合いから聞いた男。
会いに行くと、彼女は前のままでいる。
しかし・・・
ネタバレ→彼女は不治の病にかかっていた。それを知っていて男が来たかと思っていたが、男は全く知らなかったのだ。

6月
娘三人を持つ敏腕弁護士。
妻亡きあと、末娘が結婚した相手と川くだりに行き、ひどい目にあわせる。
それから娘婿とうまく行かない。
一方である女性と知り合うが、この女性がかつての妻と似ているので洋服を着せたりする。
それがたまたま娘婿の知るところになり・・・


7月

写真家の男が若い女性の写真を撮るため、モデルの子と一緒に旅行する。
これに嫉妬した妻。
離婚にまで話は進んでいるのだが、ここで、夫が突然尿に血が混じる病気で倒れる。
以下ネタバレ→最後、これがたいしことのない病気とわかるが、妻はまだ教えてない・・・


8月
かつて二股をかけた男。
その男がたまたま行った先のレストランでそのうちの一人の女性がウェイトレスをしていた。
もう一人は妻になっている。
途中から猛烈に具合の悪くなっていく男・・・

9月
自分の夫が詐欺まがいのオークションにお金を投じる。
以下ネタバレ→胡散臭いと思った彫像が安物だったと言うのを友達との旅行で知る妻・・・

10月
二人の男がいて、親友だったが一人がもう一人を裏切って恋人と寝る。
その埋め合わせに馬をくれるのだが・・・
以下ネタバレ→最後の場面で彼女、とあるがここが馬だった・・

11月
アルコール依存症だった夫が、立ち直り妻を送るドライブで事故にあう。
ところが実はアルコール依存が再発していてダッシュボードに酒があり、当時飲んでいたのだった。
以下ネタバレ→妻が死にそうだが、妻がもし生き返ったら、自分を責められそうで怖いのだ、夫は。ダッシュボードの酒は草むらに捨ててしまったから。

12月
男友達のことを夫との営みで考えていると告白され怒る夫。
しかし
以下ネタバレ
夫は「実際に」女友達と寝ていたのだった。