2011.06.18 犯罪
犯罪犯罪
(2011/06/11)
フェルディナント・フォン・シーラッハ

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評価 5(飛びぬけ)

才能の煌き、というのを感じた本だった。
そして心に異様に残る話の数々だ。
犯罪者の話なので、それぞれ犯罪がある。
事件があり、犯人探しが行われ(または最初から犯人がわかっていて)最後なぜ、ということが描かれる。
または手口そのものが描かれている。
でも決してミステリではなく(実際の犯罪、という話の構造上もあるけれど)、どちらかというと「奇妙な話」の部類なのだ。
奇妙な話でしかもねじくれていて、更に、現実の話というくくりで紛れもない現実の犯罪の物語であるのに、一種不条理でもある。だから現実の世界も、決してくっきりとしているわけではなく、混沌に満ちているんだ、というのを読者に思い知らさせてくれるのだ。

11篇入っているので一つ一つはかなり短い。
それなのにも関わらず、一つ一つが心に突き刺さる。
そしてもう一度読んでみたくなる。
何度かページを繰り返してみると、最初の話がリンゴの話であり最後の話もリンゴの話であり、このあたりの呼応も好ましい。

とても単純な語りになっていて段落も細かく分けられていて、その数も多い。
更に一文一文が簡潔で読みやすい。
語り手は、どれも「ある弁護士」であり、そこに語られているのは、それぞれ独立した犯罪の物語・・・

私が特に好きなのは、
・情熱的に愛した妻を持った老いを迎えたフェーナー氏(この途中の経過がわかりすぎるほどわかる語りになっていて見事だと思った)
・突然恋人の背中をナイフで切りつけた犯罪者の話(某日本人を思い出していたら、その名前が出た・・・最後の一言がシュール極まりない)
・オーヘンリーの物語を彷彿とさせるような(でも暗黒オーヘンリーではあるけれど)、恋人同士のすれ違いの物語ハリネズミ
・全体には悲惨な話なのに、最後とても心温まる気持ちになった銀行強盗のエチオピアの男