人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)
(2011/02/11)
三木 笙子

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評価 4.6

作品の質がどうこう、作品の謎の解き方がどうこう、というより前に、この作品全体の雰囲気が私は大好きだ。
明治の街に生きる二人のイケメン(という言葉もなかっただろうが)がタグを組んで鮮やかに謎を解く。
しかも一人は
当代きっての美貌の天才絵師、礼
一人は
雑誌社のライター(という言葉もなかっただろうが、雑誌記者)、高広
というわくわくするような設定だ。
この二人が天才絵師の一言により、
絵師がワトソン役、雑誌記者がホームズ役というように役割分担している。

二人のやり取りも読んでいて楽しいし、市井の人々の様子もまた活写されている。
(やたらなぜかワトソン役の絵師の方が頭が高い)
この中で、表題作の話は、代議士夫人の影が盗まれるという異常な事件だが、語り口はあくまでほのぼのとしている。
人情味溢れる人たちとのやり取りも、心優しい高広の佇まいもまたこちらに伝わってくるのだ。
着地点はなんとなく想像できるので、謎そのものはとても大きなものでもない。
けれども、視点も色々変わって楽しめる。
怪盗ロータスという新たな人間も出てきて、そこも読ませる。
(名探偵コナンの怪盗キッドを思った)

ただ・・・ちょっとばらつきがあるか、とは思った。
作品の方向性ということでも、かちっとした話と、箸休め的な話とが混在している。
二人のワトソン、ホームズの役割分担も決してうまくいっているようには見えない。
それでも読ませるのは、読後感がよく、この雰囲気に呑み込まれるからだと思った。

・・・
この小説、謎解きが主というより、絵師、礼の際立った美しさをめでるキャラクターのたった本でもあるので、映像化したら面白いだろうなあと毎回思うのだ。

私が好きなのは、お家騒動っぽく見えている、でも実は・・・という「永遠の休暇」と、
二人のやり取りが実によい「妙なる調べ奏でよ」(ラストの一ページ数行が特によい)

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「びいどろ池の月」「恐怖の下宿屋」「永遠の休暇」「妙なる調べ奏でよ」「人形遣いの影盗み」