2011.06.23 夜の写本師
夜の写本師夜の写本師
(2011/04/28)
乾石 智子

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評価 4.9

ファンタジーがテリトリー外の私ですら、とても面白く読んだ。
なぜなら、世界観がきちんと設定されているからだ。
また、写本師(一文字一文字手で本を写すと言う職業)が奇妙な力を持つ、という設定もまた本好きにはたまらない。
円を描くような物語で、最後どういう風に決着を見るか、というところまで神経が行き届いている。
話の中で、循環の物語、であり、そして復讐譚であるというのも徐々にわかってくる。
非常に濃密な世界をこっくりと描いたファンタジーだった。

話を読んでいくと、間違いなく海の向こうの話、であるのに、日本の香りがする。
因果応報とかそういう言葉もちらっと頭を掠めるのだ。
それでいて、異国情緒溢れる街の雰囲気というのもまたある、という不思議な本であった。

最初のところで、
「右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠」
ミッツの品を持って生まれてきたカリュドウが自分の育ての親を殺されたのを見たというところから一変する運命を見るのがどきどきした。

悪の権化のような魔導師アンソジストの造型もすさまじく、特にこの本で全ての謎の根本が解き明かされる第四章が圧巻であった。
月の巫女、闇の魔女、海の娘、という三人の魔女とカリュドウとの繋がりも読むに値する。
カリュドウが修行を積み育っていく姿も成長物語として読めるし、工房内部、ひいてはそこに働く人たちの生活も読んでいて面白い。
自分への驕りの気持ちから、仲間の少女のセフィヤを失うことになる・・・・

魔導師ではないのに、写本と言うところで文字の力を最大限に使って復讐をする、というところもまた読ませるのだ。
人の魔術を吸い取る魔導師アンソジストが本を声に出して読んで、目が焼け付くように痛み自分でくりぬいていく場面と言うのも忘れがたい。

・・・・
覚書
ウィダチス魔法、ガンディール呪法、マードラ呪法、ギデスディン魔法