オーダーメイド殺人クラブオーダーメイド殺人クラブ
(2011/05/26)
辻村 深月

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評価 5(飛びぬけ)

ああ・・巧い。
巧いし痛い。
イタイと書いた方がいいだろうか。
この話を読んでいると、強烈に巻き込まれるのだ、主人公達に。
そして読み終わったあとにもざらっとした舌触りが口の中に残る。
何度も何度も心の中でこの話を反芻している自分に気づく。

話は、アンという中二の女の子が殺人を同級生の男の子に依頼するというのが軸になっている。
アンというのはお母さんが赤毛のアンにかぶれているので付けられた名前だ。
アンは、うっすら自分が皆よりちょっと上等、と思っている。
ちょっとだけ自分は違うと思っている。
そしてそれを自覚している幼い中二でもあるし、中二病って自分じゃないかと自己分析する大人っぽさも持ち合わせている。
彼女が仲良くしている女の子達にはじかれたり、はじきかえされたり、バスケットボールクラブという学内で花形のクラブにいながら、内省していく姿が実にくっきり描かれている。
どこの部分もわかるのだ、切ないほどに。
女の子同士でちょっとしたことでくっついたり別れたりすることの辛さもわかる。
またそれを遠くでくだらないとわかっている自分がいるのもわかる。
更に異形のものに引かれ、同級生の徳川と言う男の子に(これが殺人を依頼する男の子)、殺人を頼む、とい乳母面もまたとてもとても読ませるのだ。

殺人と言うのは一回だけでやり直しがきかない。
更に、皆が忘れないような殺人を思いつかなくてはならない。
そしてノートをつけたり、秋葉原に行って制服で倒れた写真を撮ったり、いわばプレ死ぬということをするのだ。
死ぬ日までと言う目で周りを見るアン。
誤解から友達全員に無視されて悪口を言われても、あと数日で死ぬと言うことをよりどころにしているアン。
アンに寄り添っているわけではないのに、いつしか心のよりどころになっている少年徳川。
アンが好きな本のタイトルを教えてくれる徳川。
澁澤龍彦を教えてくれる徳川。
彼もまた一歩先を行った少年でそのことの自覚もある少年なのだ。
  
・・・・
この物語、途中で苛めの話が出てくるので、そこは読んでいてとても辛い。
またビニール袋に入ったものの正体などこのあたりも辛い。
アンの気持ちに同化すればするほど辛くなる。
けれど、ラストをどう終わるのか、という興味もまたあるのだ。
そして待ちに待ったラストがまた素晴らしい。
特に、徳川が本を持ってきてくれるところのシーンが美しい、と言ってもいいだろうか。
それを開いていくアンの姿に私はぐっと来た。
青春の一つの嵐が終わった光景に、そしてはっとあることに気づいたアンの姿に、再び心が波打ったのだ。