努力しないで作家になる方法努力しないで作家になる方法
(2011/06/18)
鯨統一郎

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評価 4.8

この本、鯨統一郎のファンであるかどうか、というところで読みがとても違ってくると思う。
ファンでもなんでもない人にとっては、決してこれがハウツー本でもなく、どうやったら作家になれるかというのでもなく、鯨統一郎が出来るまでの苦難の歴史なので、読んでいても、はあ・・ぐらいの感想しか出ないだろう。
けれど、ファンにとっては大いに違うのだ。
覆面作家の知られざる苦労談・・・・

あの読みやすい、ホラ話とでも言える話を真面目にする話の数々。
ifの世界の偽歴史とでもいうものを作りあげる技。
時代ネタを次々に連続に出す話。
読んでいなければわからないミステリの分類を見事にした小説・・・
私にとって、鯨統一郎は、多少の差はあり好きではない作品もあるものの、それでも大好きな作家だ。
だからこそ、この本を読んで、
(こんなにこんなに苦労していたのか!!!)
というのが驚きであった。

さくっと世に出てきて、さくっとヒットする小説家かもいれば、こんな苦節十数年の小説家もある。
何度も絶望しながら自分の道を追求していく陰には、山内一豊の妻のような奥様の存在もある。
これを読みながら、活字になる喜び、選に漏れた絶望というのをつぶさに感じた。
また全てが駄目と思っていた時、宮部みゆきの選評で立ち上がれた場面などは涙すら出た。
人の言葉がこのように人を救うこともあるのだと。
またラストの方で、東京創元社の人が、自らの進退をかけて出してくれようという編集者魂にも感激した。
こういう人がいてこそ、今私達が楽しめるのだと。

また同時代の北野勇作、光原百合など、数々の実名の作家も出てくる。
その中には知らない作家もいる、つまり今それほど流通していないということだ(実名またはペンネームが本物であるならば)
厳しい世界だなあと思った。
デビューしてもそれで万歳と言うわけにはいかないのだから。