2011.07.31
嘘
(2011/07/09)
北國 浩二

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評価 4.2

期待したものと、ややはずれていたか。
とてもいい話なのだが、私の期待度がミステリ寄りだったせいだろう、はずれていたのは。
最後の驚きが予定調和内であり、さほど驚けなかったが、しかしそこに至るまでの家族それぞれの心情は溢れるほどに描けていたと思った。
どちらかと言うと、ヒューマンドラマであり、再生していく家族小説なのだろう。
きっと作者の思いもそういうところにあるだろう。

認知症を患った、愛していない父のところに来た娘が偶然子供を巻き込む事故にあう。
そしてその子供を引き取って、父と自分と子供の三人で暮らし始める・・・


この娘の過去と言うのが徐々に明らかになってくる。
ここらの描き方がとても巧いなあと思うのだ。
また、子供が記憶喪失になっていたので、彼に「自分の子供だ」という「嘘」をつくところの経緯なども実に納得できる。
途中で見つかる父の認知症が進んでいくまでの日記、も、ねじくれていた娘の心を動かすのに十分なものであった。
認知症の父と血の繋がらない息子という少年との交流も心温まる。

虐待、ということが前提にあり、そこは辛いのだが、それでも読んだあとに一筋の光が差してくる小説だ。
ただ、「驚き」とか「ミステリ」とかを求めると、しつこいようだが、ずれている、とは思うのだが。
最初と最後が呼応しているので、最後まで読んでみて最初に戻ると、(ここから物語は始まったのだなあ・・)という感慨に襲われる。
作者の作品はとても好きなので、これももうちょっとどこかをどうにかしたら、非常に面白い小説になったのではないかと惜しくてたまらない。


以下ネタバレ
・自分の子供だ、と少年に「嘘」をついていた女。
しかし少年は信じる振りをしていたが、実は自分は虐待されていた子供だったので、記憶喪失だという「嘘」を逆についているのだった。
ここが、読者があまりに予見できる結末。