2011.09.15 鬼畜の家
鬼畜の家鬼畜の家
(2011/04/25)
深木章子

商品詳細を見る


評価 4.9

第3回 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作品。

攪拌されどろどろになったような、おぞましいといっていい家族ミステリである。

聞き書きという形式で始まる「ある一つの家族の崩壊」の物語だ。
聞き書きが生かされていて、最後まで緊張感が解けずに私はとても面白く読んだ。
伏線というのも各所に散りばめられているのだが、読んでいると何しろこのすさまじい一家の話に心が巻き込まれるのだ。

最初のところで既に、自殺だったのにもかかわらず知り合いの医師に頼んで病死ということにしてもらう、保険金のために、という保険金殺人をにおわせる聞き取りがある(これが知り合いの医師の証言)
この時点でこれすら、自殺→病死、にしているが、読者側は実は自殺→殺人なのではないか?と疑ったりもする。
そして知り合いの医師が、虚偽の死亡診断書を書くまでにいたる心も納得できるように描かれているのだ。
そして続々と鬼畜の北川家の中心人物の母の所業が明らかになっていく。

女の子二人、男の子一人がいるが、

・女の子供の育児放棄(一人を突然親戚の家に預ける、そしてこの家が火事で消失して財産を取る)
・女の子供一人の事故(これまた賠償金をせしめる)
・男の子供の超スポイル振りから色々なことがにおわされている

ここまでで、北川家の母郁江がとんでもない人物で、この人が全ての元凶であるというのがしっかりと読者に刷り込まれる。
これがタイトルの鬼畜の家、なのかというのも心に刻み込まれる。
彼女の出自というのも途中で明らかになるが、これまた「こういう彼女がなぜ作り出されたか」という話で、とても説得力があるのだ。
全体に非常にどの話も強いインパクトのある満ちた話だ。

・・・
そしてこれだけ説得力に満ちていて、後半で、この家のいわば生き残りの女の子の口から語られる真相がまた実に辛く(やっぱり鬼畜の家だったなあ・・・)と思わせるのだ。

が、面白いのは実はここからなのだ、この話。
丹念に読んでいって、ちょっとした楔のようなもの、?と思うようなものは読者の心にいくつか打ち込まれている。
それが全て解ける時・・・・

この解ける瞬間が非常に面白かった。
一つのトリックとしては海外小説でよく見かけるトリックであるけれど、それが実にわかりにくいのは、前半の畳み掛けが功を奏しているのだと思った。

以下ネタバレ

・自動車事故転落で、この家の息子と母が死亡する。
母が企画したものと思われていた。
しかし亜矢名であった。

・彼の哲も自殺に見せかけて殺したのは亜矢名。

・小さい頃から祖母を毒殺しようとしていたのも亜矢名。

・父の死は、自殺ではなくて殺人でもなくて本当の病死。

・母と兄を殺したのも亜矢名。

・動物アレルギーを人の区別の根拠にしているところが面白い。
・ペンだこが利き手側にあるというのをやはり人の区別の根拠にしているところが面白い。
くわえて、隣人が貸してもらった鋏がおそらく逆用の鋏だったというのも根拠。
・決定的な証拠として指紋

・亜矢名は優秀であって大学も決まっていてしかも不倫とはいえ彼(哲という医者→のちに自殺・亜矢名が死んだと思って→これが亜矢名の復讐)もいた。
一方由紀名は引きこもり、なのでこれでは賠償金が取れないと一家全員が協力した(息子も母も協力)

・息子が近親相姦していたのは、母ではなく
妹の由紀名であった。
そして妊娠していた。

・小さい時に叔父の家に預けられ、叔父から犯されたのは妹の由紀名。
これを知った亜矢名がその家に火をつけろと由紀名をそそのかす。

・娘二人のうち、優秀な長女の亜矢名が、鈍重な妹由紀名と入れ替わっていた。
マンションのベランダからの転落死は由紀名だったが、外には亜矢名と公表した。

・最後の最後で亜矢名の独白で真実が語られるわけだが、
ここがちょっと真実と驚愕の真実とが(つまり嘘)入り混じっていてそこがどうなのだろう。
全て嘘なら嘘だったらと。
(母が殺してない病死偽装は本当だったとか、放火殺人の「教唆した人間は」母ではなく亜矢名ではあったがこれも放火殺人をした当の人間(由紀名)は同じだったとか、このあたり。)