奇跡なす者たち (未来の文学)奇跡なす者たち (未来の文学)
(2011/09/26)
ジャック・ヴァンス

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評価 5

ジャック・ヴァンスを初めて読んだが、興味深く読んだ。
異星に実際に自分がいるように感じられ、ぐいぐい引き込まれたのだった。
自分が入ったこともない異世界を生き生きと描き出してくれていた。
そしてそこはなぜか遠い昔に行ったことがあるような異郷でもあるのだ。

最初の話「フィルスクの陶匠」は、オチ的なものはわかっているのだが、そこに至るまでの語りっぷりが実に読ませるのだ。
最後まで確実に読んでわかって、もう一度最初に戻ると、この話が単純にオチだけを語るのではなく、経緯を読ませる話でもある、と思えるのだ。
勿論、横暴な上司の姿もくすっと笑えるし(ありがちだし)、その上司の行く末というのも苦い笑いが伴う。

「音」も大変面白い。
ある日記を読んでいるのだが、その日記には、ある星に不時着した男が「音」にさいなまされている日記が書かれている。音は本当にあったのか、そこに誰かがいて誰かが音を出しているのか。
またここでは色がある一つのキーワードになっている。
時間によって幻想的に月が赤・青・緑と変化して行く・・・・
全てに答えはないのだが、ラストまで実に読ませる一作となっている。

「最後の城」も大変面白かった。
猿の惑星的な雰囲気も持っていると思う。
人類の末裔がこもって暮らしている城の数々。
人類がかつて異星人に卑しいとされる労働を任せていて、人類そのものは優雅な生活を送っていた。
が、異星人がある日反乱を起こす・・・・
城、が次々に落城して行く・・・・この落城が続いて行く中、巨鳥が舞い、末期的症状になって行くのに、相変わらずのほほんとしている人類達・・・何も出来ない人類達・・・
おおいなる皮肉の話、とも読めるかもしれない。

「フィルスクの陶匠」(酒井昭伸訳) The Potters of Firsk
「音」(浅倉久志訳) Noise
「保護色」(酒井昭伸訳) The World Between
「ミトル」(浅倉久志訳) The Mitr
「無因果世界」(浅倉久志訳) The Men Return
「奇跡なす者たち」(酒井昭伸訳) The Miracle Workers
「月の蛾」(浅倉久志訳) The Moon Moth
「最後の城」(浅倉久志訳) The Last Castle