2011.10.31 迷宮
迷宮 (集英社文庫)迷宮 (集英社文庫)
(2002/05/17)
清水 義範

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評価 4

最初から、猟奇殺人(女性を殺害しそのあと・・・)というセンセーショナルな事件で始まる。
でもこれが面白いのは、その事件をだらだらと書いているのではなく、
・ある一人の男性が、色々な角度から書かれた文章ーそれは手紙であったり供述調書であったり犯罪記録であったり週刊誌報道であったりーを読んでいく、という設定なのだ。
どうやら、この男性は病院にいて記憶喪失らしい。
自分が何者か分からないらしい。
そしてこの文章を次々に渡してくれているのが、医師。
治療と称して、色々な文章を次々にこの患者に読ませるのだ。
読んでいるうちに記憶喪失の男性は、もしかして?と思うことがある。

この設定だから、当然読む側は、記憶喪失の人間の物語、であって、真実の記憶と言うのはどこらにあるか、というのを期待するだろう。
例えば、シンデレラの罠とかそのあたりを。
でもこれは最後まで読むと、記憶喪失を取り戻す話だけではない、ということがわかってくる。
話が枝分かれしてくるのだ。
・供述調書とか手紙や弟の証言から、本当にこの事件の犯人は週刊誌に報道されているようなストーカーで人間だったのだろうか。
・また相手の殺された女性の実像と言うのは一体どういうものだったのか。ただただひどい男に捕まったがために殺された純粋無垢な女性だったのか
更にここに「作家」の存在が後半出てくる。
・作家が自分の作品を出すということで、ここにまた色々な矛盾が出てくる・・・・

このように二重三重の網に絡め取られたような物語になっているので、単純な話ではない。
ただ・・・・
どうなのだろう。
最後まで読んで、とても驚いた、または腑に落ちたと言う気持ちにはなれなかったのだ。
異色ではあるけれど、沸き立つように面白いかどうかというのとはまた違った気持ちがよぎったのだった。
どちらかと言うと、途中はとても面白いのにこの結末はある意味予定調和内だったのかなあと思ったりもしたのだった。