三本の緑の小壜 (創元推理文庫)三本の緑の小壜 (創元推理文庫)
(2011/10/28)
D・M・ディヴァイン

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評価 5

このミステリは、犯人当てということに主眼を持っていくと普通なのだろう。
けれども、語り口を変え、人を変え、一人称と三人称が組み合わされ、大変緻密に人間の心理描写が記されていく。
そういうところが読ませたし、一旦読み始めたら、読む手が止まらなかったのも事実だ。

最初に少女ジャニスが殺される。
このジャニスを友達が待っている水の場所に車で送ったのは美しい女性教諭シーラ・ケアリーだ。
ここで水遊びを優等生グループでしようとしていると、
知恵が遅れたとてつもなく意地の悪いシーリア・アーミテイジが子分の子供達を苛めているのを目撃する。
そこにシーリアを探しに来た彼女の母親のグウェン・アーミテイジがやって来る・・・

全てはこの発端にかかっているので、ラストまで読んでここをもう一度目を皿のようにして読んでみると大変興味深いことが分かる。
「ある眼」で見ると同じ事が違って見えてくるのだ。
読者はこの人かな?この動機かな?と楽しみながら読んでいくことになる。
一人一人の心理描写が巧みであり、なぜその人がそういう行動をしたのか、なぜその人がその場にいたのか、なぜその人がそういう考え方をしたのか、このあたりが独白部分(一人称部分)で詳しく書き込まれている。

ちょっと一癖ある人たちが多い中で、普通に見えているマンディ・アーミテイジがいる。
義理の母に抑圧され、父には無視され、恋人には振られ、そこから臆病になり・・・と散々なのだが、彼女の存在こそがこの物語の屋台骨のようにも見えた。

途中である人間が殺されてからまた別の人間がやって来る。
ここらあたりも、場所は動いていない閉塞状況の中、新しい風が入ってくるようで好ましい。

それにしてもディヴァイン、はロマンチストだと思う、毎回男女の恋が色濃く出ているのだから。