2011.12.04 LOVELESS
ラブレスラブレス
(2011/08)
桜木 紫乃

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評価 4.8

大変面白く読んだ。
最初のところで死に行く人が出てきて、これは誰だ?と思っていると、妹が出てきたり、姪が出てきたり、娘が出てきたり、ばらばらっと人が登場する。
ここではよく関係性が分からない、親戚であるということの他は。
この人たちは一体どういう人生を歩んできたのか。
彼女達のルーツとは何なのか。
北海道の厳しい自然とそして開拓民という過酷さと、貧しさの中から立ち上がり生きていく二人の女性を軸に物語りは進んでいく・・・・
話は決して洗練された話ではなくどちらかといえば泥臭く、地に足のついた物語だ。
この語り口に惹き込まれ、一気に読むことになったのだった。

・二人の姉妹がいる。
姉が百合江、で、娘が理恵。
妹が里実、で、娘が小夜子。
理恵と小夜子は同級なので従姉妹同士としてとても仲が良かった過去を持つ。
百合江は開拓貧農農家に生まれ、父の飲酒と暴力に晒され、母ハギも貧困の中で無力である。
里実は生後親戚に預けられ贅沢な暮らしをしていたが、途中で子守のために実家に引き戻される。
・この子供達の理恵は作家の道を歩み始めていて、8歳年上の男と結婚している。
小夜子は役所に勤めていて、不倫関係でおなかに45歳で妊娠してしまった。


現在の視点がありそこに過去が織り込まれていく。
過去の、里実が極上の暮らしから貧困の実家に行った衝撃と彼女の気の強さのルーツがとても巧みに活写されている。
また百合江が心ならずも父の呑み代の借金の方に薬屋に奉公に出され、そこからどさ回りの歌手に移行していくというのも、その時々の男の影や一座のあれこれとともに読ませるのだ。

百合江の生き方と里実の生き方というのを両方見ることが出来る。
常に開拓していこう、先を見ていこうとする里実の生き方。
戸惑い躊躇いながらそれでも自分を忘れずに生きていく百合江の生き方。
どちらがいい悪いではなく、最後まで読み終わって、冒頭に戻ると熱いものが心をよぎるのだった。

綾子という百合江の最初の娘の行方も最後に分かる。
ここも実に感動的な場面だし、一座で苦楽を共にした宗太郎との再会場面、ずっと支えてくれていた石黒との別れの場面と、印象的な場面がいくつもあった小説だった。