2011.12.13 解錠師
解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2011/12/08)
スティーヴ・ハミルトン

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評価 5

かちゃっかちゃかちゃかちゃっかちゃっ。
音がないのに音が聞こえてくるような小説だった、それも金庫破りの音が。

大変面白く読んだ。
話も分かりやすくそして展開も抜群に面白い。
冒頭で主人公の男が刑務所にいるというのがすぐに語られている。
・なぜそこに行き着いたのか。
・喋らない(喋れない)彼の幼いときに受けた事件とは一体何か。
・なぜ金庫やぶりのプロになったのか。

これらが、二つの時制を行き来しながら克明に描かれていく。
堕ちていく様、ではあるのだが、それなのにそこに陰惨さはなく、読んでいる内に口のきけない少年に肩入れして、頑張れ頑張れ!と声をかけたくなってくる。
どんなプロのカウンセラーも言葉を再び引き出すことの出来なかったある幼い時の出来事。
それは最後の最後で語られる、しかも喋るとか文字で記すとかとは全くの別のことで表現される。
ここが非常に感動的な場面だった。

途中の金庫破りの話もまた面白い。
どういう風に人を騙すか。
どういう風に鍵を開けていくか。
鍵の形状によってディスクの引っ掛かり具合、数の組み合わせ方と金庫破りの頭はめまぐるしく働く。
「組む人」によってそれはそれは危険度が増したり減ったりするのも犯罪の妙だ。
芸術を作っているようなそんな金庫破りの技が披露されるのが小気味いい。
ゴーストという人間がいるらしく彼に特訓されたというのも途中で徐々に分かるのだが、それではゴーストとなぜ知り合ったかというのがある時点で、ぱっとわかる。
二つの物語が近づいて近づいて開く場面がある。
ここで、この話は、少年の成長物語、でもあるけれど、深い深い愛の話でもある、と思ったのだ。
一目で惹かれたアメリアと言う女性の存在。
彼女との美しいしかしはかない逢瀬と別離。
そしてなぜ別離せざるを得なかったかというのがまた切ない理由なのだ。

二人が意志を疎通させるある一つの手段が胸を打つ。

以下ネタバレ
・アメリアの父の借金のかたに、少年は犯罪の未知に歩み始める。

少年とアメリアが意志の疎通を始めたのは、少年の描いた絵から。
そしてアメリアもまた非常に絵が上手かったので、これに絵で返答する。
二人がかつての少年の家に行き、「絵」で少年がかつて起こった事を表現するというところが圧巻だ。