或るろくでなしの死或るろくでなしの死
(2011/12/22)
平山 夢明

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評価 4.9

暴力描写とかえぐい描写とかが苦手な私が、なぜ平山夢明作品にはこれほどまでに惹かれるのだろう。
ここには、思わず痛い!いやっ!というような場面が多々ある。
禁忌と言われる出来事も多々ある。
それなのに、これを読んで気高さのようなものを感じるのはなぜだろう。
読み終わってそういうことをまず思った。

全てが死の気配に彩られている。
そして全ての人間が少しずつ、または大幅に歪んでいて、その歪んだ狂気が何かを引き起こす。
たとえば「或る愛情の死」では(これが中では一番の禁忌作品だと思った)、自分の子供のどちらを自動車事故の燃えそうな炎の中から救い出すか、という命題が突きつけられている。
これは結果なので、この結果を見て、妻が狂気の淵にたたされているのもとても分かる。
しかも、救われた子供ではないほうを救おうとしていたのに、なぜやめてもう一人にしたのか。
ここの人間の心の暗部の恐ろしさ、無意識というのがじわじわと襲い掛かってくる。
そしてなんとも皮肉な結末が主人公を襲うのだ。

たとえば「或るろくでなしの死」では、サキという少女に翻弄される殺し屋の男がいる。
サキの暴力行為は小動物に向けられまことに陰惨な場面が続いていく。
脅迫する少女と脅迫される大人の男の逆転の立場が面白い。
この作品で、サキが何を訴えようとしているのか。
それを殺し屋が徐々に分かってくるところが読んでいてどきどきする。
この作品は、これだけ辛い場面が多いのに、最後青空がのぞくような爽快感に満ちているのが不思議だった。