黄昏のベルリン (文春文庫)黄昏のベルリン (文春文庫)
(2007/10)
連城 三紀彦

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評価 5(飛びぬけ

刊行当時読んでいなかった自分を呪いたいほど面白さに満ち溢れている本だった。
きっと数年に一度出る私にとってのヒット作だと思う。
ベルリンの壁は崩壊しているけれど、ベルリンの壁そのものがあった時代というのは知っているので、そこは全く古さを感じなかった。

話は、冒頭、リオデジャネイロの娼婦の死から始まる。
この印象的な場面から、殺人者のハンスとは何者?と思ってページをめくっていくと・・・
ここからスタートして、ニューヨーク、東京、パリ、ベルリンとヨーロッパを縦横無尽に渡って行く推理小説だ。
描き方も非常に面白く、場面転換がダッシュで大胆に成されている。
これには最初慣れないで、(今何の話?誰の話?)と思うのだが、慣れていくと、これが実に小気味良い効果を持っている。
ダッシュでどんどん話が続いていく加速感がある。
めくれていくように話が続いていくのだ。

青木という日本人画家がいて、彼は平穏な生活を送っているのに、ある一人のドイツ人女性に突然自分の出自を明かされる。
いわく、青木は、第二次大戦中にユダヤ人の父と日本人の母との間に生まれた子供で
強制収容所で生まれたと。
これを青木に話した目的は何か。
また真実なのか。
青木は自分の出自を求めていく・・・・・

・強制収容所での親子へのひどい扱い
・強制収容所での暴君になっていたある一人女性看守の現在と過去
・ナチスの台頭するヨーロッパの悲劇
・エルザというドイツ人女性の謎
・一度決まったものがまたひっくり返される面白さ
・誰が敵で誰が味方か最後まで予断を残さないスリリングな展開

そして何と言っても、本当の本当の真実だろう。
唖然茫然として本を取り落としそうになった。
またトリックとしても、青木の最後のほうの場所が非常に上手くできていた。
こういうトリックなのか、と古典的なものではあるが、場所とその使用法を考えると感慨深いものがあったのだった。

以下ネタバレ
・青木は、
ヒットラーと日本人母との間の子供であった。
ヒットラーの直系ということで
ネオナチに囚われるというところまでは想像がつく。
しかし、彼の子供、つまりヒットラーの孫までを入手する(エルザと関係を持たせて子供を作らせる)というのは思いも寄らなかった。そしてだからこそ青木を逃がすことが出来たと。

・西ベルリンから東ベルリンには行きやすい。
東ベルリンから西ベルリンまでは行きにくい。
これを利用して
同じ部屋を西ベルリンと東ベルリンに作ったと言うトリック。
東ベルリンだと思わせていたが、それは気絶している間に青木の体を移動させて実は西ベルリンにいたと錯覚させた。