アイルランド幻想 (光文社文庫)アイルランド幻想 (光文社文庫)
(2005/08)
ピーター トレメイン

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評価 5(飛びぬけ)

ゴシックホラー好きとしてははずせない一冊だった。
どの話も印象深く、非常に面白い。
アイルランドの厳しい自然状況で飢餓があるとか、植民地政策を無理矢理押し付けるイギリス人に対しての怒りとか、政治的背景歴史的背景も組み込まれながら、ケルト民族の一種の神話と伝承を巧みに語る語り口が忘れられない。
ホラーではあるけれど、実にそこに真実の目というのが潜んでいるように思った。

最初の話は、盲目の男が優しい妻と一緒に屋敷に住む、という出だしから始まるが、先を読者に予感させながら、ここに石柱を入れ込むところが素晴らしい。
最後でこの石柱の怖いことと言ったらどうだろう。
しかも盲目の人間がこれを描写しているので、私達読者は彼の語りに引き込まれることになる。
彼の表現でますます怖さが倍増する。

大飢饉、は25年もの間、教会で告解しなかった男が突然告解した話、だが、これもまた植民地政策でどうしようもなくなった人間の生きる様というのを描いているホラーだ。
人肉食にせざるを得ないと言う危機状況


幻影、は小さな島に赴任した神父の幻影だけれど、モーパッサンのある作品をちょっと思い出した。堕落と信仰のはざまというのが幻想譚と一緒になってこちらの心をぞわぞわさせる。

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石柱/幻の島ハイ・ブラシル/冬迎えの祭り/髪白きもの/悪戯妖精プーカ/メビウスの館/大飢饉/妖術師/深きに棲まうもの/恋歌/幻影