2012.01.23 破壊者
破壊者 (創元推理文庫)破壊者 (創元推理文庫)
(2011/12/21)
ミネット・ウォルターズ

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評価 5

読み応えのある一冊だった。
暗く澱みがあり重々しい小説の書きっぷりが相変わらず大変面白い。

最初の部分に地理的なことが実に詳しく地図で出ていて、更に写真まである、という豪華さだ。
そして、冒頭、二人の男の子達が偶然ある死体を見つける、というところから始まる。
また同時期にたまたま望遠鏡を覗いていた人間もいる。
二人の男の子達と共にいた発見時の一人の男・・・・・
また別の場所ではハナという女の子が一人口も聞けずに茫然としていた。
この子供と死んだ女性とが親子だと言うことがわかった時、一体何が起こったのか、
という疑問が湧き出てくる。
もし母親と子供が一緒だったら、母親のみ殺されて子供は返されたわけだから。
レイプの痕跡がありしかも指が何本も折られ長時間波に漂っていた、という非常に陰惨な死体の話、であるのにすさまじい読ませる吸引力がある。
どちらかと言うと、この小説は警察小説でもある。
そしてまた警察側の視点が多いのだが、もう一つの側面はロマンスだ。
巡査と地元女性の恋・・・・
ここもまた読みどころであった。

この物語の面白さは、色々な人に死んだ小柄なブロンド女性の一面を語らせていてそれがそれぞれに違う、というところにもあるが、それ以上に、
『語っていく人間の事情』というのが複雑に証言に関わってくる(意識しているにせよ意識していないにせよ)というところだ。
ある者は、望遠鏡を覗いていた事実を知られたくない。
ある者は、義理の娘達と気まずい想いをしたくないので波間に浮かんでいたものの証言がしにくい。
またある者は、会社時代の殺された彼女の言動について、批判的である。
ある者は、会社時代の彼女にやや好意的である。
ある者は、女性が成り上がる、ということに対して嫌悪感を持っている。
ある者は、女性の尻軽さを批判している。
それぞれが小さな嘘があり、それが保身のためであったりちょっとした思惑であったりするのだ。

ここを紐解いていくミステリ解きの面白さが詰まっている本だと思った。