青チョークの男 (創元推理文庫)青チョークの男 (創元推理文庫)
(2006/03)
フレッド ヴァルガス

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評価 5

大変面白い。
推理小説の部分も面白ければ、全体のキャラクターも特徴的でどの人間も活写されていて思わずのめりこむように読んだ。

表紙にあるように、青いチョークの中に、最初奇妙なもの(蝋燭、クリップ、人形の頭・・・)が置かれているだけの犯罪・・犯罪ともいえないただのいたずらが、今度は青チョークの中に死体があるという殺人事件になっていくところから物語は始まる。
青いチョークの円の中というのがまずなんて魅力的なんだろう。
パリのあちこちの街区に青いチョークが出来ていく不思議さが冒頭から満ち満ちている。

そしてこれをぴかっとおかしい!と思うのが警察署長のアダムスベルグだ。
彼は天才的な事件解決をするというので署長まで上り詰めた男だ。
だけど読んでいると、彼の解決は直感が多い。
こうしてこうなったから、というより、じいっと考えていてそこにぽっと行き着いたという感覚が多い。
だらしないっぽいのになぜか突然きめの細かい心遣いをする。
しかも、別れた美しい女性カミーユのことが頭の半分ぐらいを占めている憎めない男だ。
この署長と一緒に行動する5人の子持ち刑事ダングラールがまた几帳面で仕事に熱心な男だ。
それなのにダングラールは昼から飲むと言う大酒飲みであるところとか血を見ると気分が悪くなるという刑事らしからぬところがまた憎めない。

冒頭で、盲目の美青年シャルルを自宅に住まわせる不思議な魅力的な女性海洋生物学者マチルドも印象的な登場の仕方をしている。
マチルドの家でマチルドのお世話をしていて、常に結婚相手を探していた謎の老婆クレマンス、
そして小柄な哀れっぽい男歴史学者ル・ネルモー
と、どの人間も個性的なのだ。

第六感にしたがって動いていくアダムスベルグもラストでは見事な論理的推理を展開していく。
なぜ楕円だったのか
なぜ楕円にしたのか
なぜ犯人と思しき人間は、いつもリンゴの腐った臭い、とか酢の臭いがしていたのか
パイプを歯にあてた音に注目したのはなぜか・・・・・

ラストのこのあたり、冴え冴えとしてきて、物語の完結がすがすがしい。

以下ネタバレ
・クレマンスは女装したル・ネルモー(一度男性のル・ネルモーとして疑われたが、彼の誘導でクレマンスに警察の目が行き、自分は逃れる)

・青チョークを書いた男と殺人犯人は一緒(ル・ネルモー)
・マチルドは青チョークで書いていた男を見かけて知っていた。
・マチルドをも利用して女装して、マチルドが二人(ル・ネルモーという男性と、クレマンスという老婆と両方を知っていると言うことを逆手に取った)

・円は楕円があったことで署長が不信感を持った。
なぜなら偏執狂だったら楕円であるはずがないから。
ここから円がフェイクであることを考え出す。

・殺した動機は、50年前の婚約者が逃げたため(二番目の殺人)
最初の女性は無差別と思わせるため。
最後の女性は本人の妻(これまた不倫をしていた)