2012.02.16 閉鎖病棟
閉鎖病棟 (新潮文庫)閉鎖病棟 (新潮文庫)
(1997/05)
帚木 蓬生

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評価 4.9

思っていた話と全く違っていた。
思っていたのは、鬱々たる精神の病を抱えた方たちの病棟の話だ。
ところが、この話は、
精神科病棟にいる人たちの「過去」から語られている。
なぜこの人たちがここに至るようになったか。
途中から病棟になるので、前の方のページを捲り返してみて、この人がこの人だなあ・・・と見比べてみたりもした。
決して声高く叫んでいるわけでもないのに、筆致が心温まるので思わず引き込まれる。
一幕の群像劇を見ているような気持ちになった。
話の途中に本当に劇の場面がある、ここもまたぐっときた。
それぞれの立ち位置というのが目に浮かんだ。
丁寧に紡がれた物語なので物語の中にいつの間にか入り込んでいる自分がいる。

なんて優しい人たちなのだろう。
なんて心と心が結びついている集まりなのだろう。
チュウさん、秀丸さん、昭八ちゃん、敬吾さん、そして島崎さん・・・
世間からはぐれている人達、家族から見放された人達なのに、なんて普通なのだろう。
読んでいる内に、正常とそうではないものとの違いって何なのだろうとつくづく考えさせられた。

ここで一つの殺人が起こる。
起こるけれども、その殺人が実に真っ当な殺人であるというのが身にしみてわかるのだ。