ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)
(2007/05)
樋口 有介

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評価 5

なんていい話なんだろう!
なんてすがすがしい青春ミステリなんだろう!

一人称で語られる小説だが、全くそれが飽きない。
高校二年生の「ぼく」は刑事の息子であり、同級生が殺されると言う事件があり、そこからやくざの娘「麻子」と友達になっていく・・・

二人の高校生の瑞々しいことと言ったらどうだろう。
会話の一つ一つに無駄がなく、ちょっと背伸びをしている「ぼく」にも好感が持てるし、すねたり怒ったりする「麻子」の一挙手一投足からも目が離せない。

二人が相談して相談して、次から次へと真実を暴こうとしていくのだが、その過程が好ましい。
怒った麻子が、扉の向こうにいつまでも佇む場面、
二人でいる時に爆発したように麻子が泣く場面、
人が来ない同級生のお葬式でなんともいえない気持ちになる場面、
全て忘れがたい。

また、刑事のお父さんもいい味を出している。
何も家事が出来ないで、どちらかと言うとお父さんより心が大人の(大人になろうとしている)「ぼく」に夕食をあれこれ準備させたり、ほのかに学校の先生に恋心を抱いたり、くすっと笑える場面が多い。
しかもこのお父さんの意外な過去が途中で明らかになる鮮やかさと言ったら!

解説にもあるけれど、かつての赤頭巾ちゃん気をつけての、薫君と由美ちゃんを思い出しながら大変幸せな気持ちで読み終わった。