謎の1セント硬貨――真実は細部に宿る in USA (講談社文庫)謎の1セント硬貨――真実は細部に宿る in USA (講談社文庫)
(2012/02/15)
向井 万起男

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評価 5

大変面白かった。
失礼ながら、向井万起男と言うと
「宇宙飛行士向井千秋の旦那で、髪型のちょっと変なお医者さん」
という認識しかなかった。
この認識を覆したのだが、ミステリマガジンの向井万起男エッセイだ。
まだ連載中だけれどアメリカにまつわるエッセイ(本に対してもよく書いている)が滅法面白い。
この流れで、彼のエッセイを読んでみたいなあ・・・と思っていた。

この謎の一セント硬貨というエッセイは、作者が全米で疑問に思ったこと(しかも見ようによっては非常に瑣末なことで人によってはどうでもいいこと)をホームページや周辺関係者にメールしていって、その返事をもらってそこからアメリカを見ていく、というものだ。
勿論、掲載の許可は取っているわけだが、これが実にアメリカらしい。
ユーモアに富んだものから、真摯に受け止めてくれたものまでがある。

表題エッセイは、飛行機内のシャンパンサービスの場面から(古い一セント硬貨を持っている人にあげるというコールがあったことに始まる)、ある年の一セント硬貨がスチール製だったということがわかる。
そしてその年1943年だけだったのか。
それほど貴重な一セント硬貨だったのか。
これをめぐって質問メールが始まる。

また、Kilroy Was Hereという落書きをめぐる話など、読んでいてぞくぞくするほど面白かった。
これだけ多くの落書きがされている(しかも絵まであるものもある)Kilroyとは誰なのか。
皆、それを認識しているのか。
これまたKilroyの探索が質問メールで始まる。

危険な黒人地域に突入していく、大リーガーのハンク・アーロン球場についての話もまた印象深い。
なぜあれだけ有名なのに埋もれているのは黒人選手だからなのだろうか。
時間の経過とともに何度かこの球場を訪れる作者の情熱(執念?)にも脱帽した。

そしてこういうアメリカの疑問のみならず、夫婦で、アメリカ全土を回っている二人の旅行スタイルもとても好感が持てた。
ちあきちゃん、まきおちゃんと何の衒いもなく呼び合う自然なスタイル。
お互いの良いところを見つめあう姿。
アメリカの話もさることながら、この二人の夫婦と言うあり方にもおおいに感銘を受けたのだった。
作者の本をもっと読んでみたい。