ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
(2012/08/08)
コニー・ウィリス

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評価 5

ブラックアウト。
それは灯火管制のことだ。
この話の舞台は、2060年のロンドンになっている。

非常に厚い本だけれど読み始めれば一気に虜になる。
「ドゥームズデイ・ブック」「犬は勘定に入れません- あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」のオックスフォード大学史学部のタイムとラベルものだ。
解説にもあるようにこの二冊を呼んでいなくても十分楽しめるけれど、そこここに
(コリンが年頃になってる!)
とか
(お懐かしいお名前・・・ダンワージー先生!(ただしこれでは姿がまだ見えない)
とか

前の出来事を語っているところもあるので、読んでいればなお楽しい。
また後半、同時代に投下(タイムトラベルで投下される)された人が、自分の危機の際別の相手を探して右往左往するところは、「航路」のばたばたぶりを強く喚起させられた。
更に、何度も出てくるマーブルアーチの地名は、同作者のマーブルアーチの風の話が頭をよぎる。

この話、三人の男女が第二次世界大戦の最中のイギリスロンドンに投下された、という設定になっている。
最初のところから、なぜかダンワージー先生が一向に見えない。
どこに行ってもお会いできない。
いつかは出てくるだろう・・・と思っている間に、投下が始まる。
そしてダンワージー先生がいなかったのがもしや?と思う後半になっている。

・疎開児童の研究でお屋敷で手に負えない姉弟の世話をするアイリーン
・現実世界でコリンに接近されながらも、自分の頭の中に爆撃されたところを叩き込んでからやってきた灯火管制の世界のデパート店員のポリー
・歴史の分岐点のダンケルク撤退の際の民間人英雄を探しに行くのだが、自分のせいで歴史を変えたのではないかと思い悩むマイク

それぞれが自分の与えられた場所でそれぞれの立場で思い悩んでいる。
自分の果たす役割を全うしようとしているのに、徐々に思いもかけないことが出てくるので、それに大わらわと言った感じだ。

しかし彼らの希望は、元に戻れることにかかっている。
それがあるからこそ何があっても安心している。
それなのに三人とも投下場所に行っても元に戻る手立てはないし、緊急の際の要員は迎えに来ないしというところでパニック状態になるのがとてもわかるのだ。

またそれぞれが既に過去の人たちと触れ合っている。
生きていくということは一人ではないので、それはそれは深く付き合い始めている。
マイクの言う、歴史の修正力はここにも及ぶのだろうか。
そんなところにも興味がある。

個人的にはアイリーンの見ている悪ガキがすさまじいのでここで大いに笑った。
(この姉弟が後年すばらしい人間になったというオチがあったら笑うと思う)
またポリーが防空壕でであった老年のシェイクスピア俳優の素敵なことといったらどうだろう。

まだ前編で、来年この後編が出るそうなのでこの興奮を忘れずに来年を楽しみにしたいと思う。