2012.09.03 迷宮
迷宮迷宮
(2012/06/29)
中村 文則

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評価 4.9

冒頭からぐいぐい引き込まれた。
自分の中にいるRという人間。
彼と自分の折り合いをつけるために自分の分身であるRをなくしてしまおうという幼い日々の出来事・・・
そこから一変して、成年になってある女性と知り合うところから物語は始まる。

この話は、人間の根源に潜んでいる悪意、とか、悪魔のような所業を炙り出している。それが普通の日常にぽっかりと口をあけていてひっそりとそこに真実が隠されている。そしてそこはあたかも迷宮になっている。
途中に大震災への言及も何回かあるのだが、ここもまた迷宮のような話なのだろう、混沌として先が見えない、誰もこの先が見落とせないと言うシンボルのような大震災での出来事の数々・・・

この小説の面白さは、一見エンタメのようにして描かれているところだ。
知り合った女性は、ある事件の被害者でもある。
その事件とは、誰ともわからない人間が一家全員を殺害して(両親と兄)彼女だけが生き残ったと言ういわばサバイバーなのだ。
誰かが侵入して、殺害したのは間違いないのだが、それには色々な疑問が出てくる。

なぜこの女性が男性を見つけ出したのか。
また女性は本当に真実を知らなかった幼い子供だったのか。
そして冒頭のRは一体どうなったのか。

ここらあたりの読みが非常に面白くスリリングであった。