ソロモンの偽証 第III部 法廷ソロモンの偽証 第III部 法廷
(2012/10/11)
宮部 みゆき

商品詳細を見る


評価 5

変わりなく最後まで面白かった。
出版されるのを楽しみにしていて一気呵成に読んだのだった。

この巻は、副タイトルにもあるように「法廷」だ。
中学生の擬似法廷ではあるものの、一つの法廷物として描かれている。
そしてここでは、ほぼそれぞれの家の事情なんて出てこない。
読者は、1と2の話を念頭に置いた上でこの話を読み進めることが出来る。
この子はこういう事情があった家だ。
この子は友達とこういう関係性を築いていた。
これが頭の中に既にあるので、法廷の三巻でも実際にその場に居合わせるぐらいの気持ちになっている。

ここで、今までの最大の謎というのは、なにやら、神原和彦が秘密を持っているようだったがそれは何かと言うことだと思う。
これが
塾の関係なのか(ここで柏木君と知り合っているわけで、塾が閉鎖されたのも何か関係しているのか)
柏木卓也の死に何らかの関係があるのか
と言うことにも繋がっていく。
同時に、彼は被告になっている不良の大出の弁護人にもなっているという屈折した関係だ。
本当は大出の弁護をしたかった藤野涼子が検察側になると言うのも皮肉な話だ。

この二人を中心としたやり取りが緊迫して読ませる。
どういう証人をつれてくるのか。
どういう新事実がわかってくるのか。
実の父、実の兄、美術の先生、塾の先生、と、証人によって、さまざまな柏木卓也像が見えてくるのもまた興味深い。
事実が徐々につまびらかになっていく時に新たな物語が始まるのだ。

またもう一つの謎は、樹理が見たという殺人現場は本当だったのか?と言う疑問だ。
見たこと自体が全て嘘なのか。
それとも見たのだが、大出ではない別の人間だったのか。
最初の方の巻では、これが全て嘘に思えている。
ところが途中からもしかしたら本当かも?と思わせるところがまた心憎いほど巧い書き方だ。

・・・・・
そして、殺されたにせよ、自殺したにせよ、柏木君が死ぬ直前屋上で一体何があったのか、というのも最大の謎だ。
彼は一人だったのだろうか。
一人で悩んで飛び降りたのだろうか。
それとも誰かが押したのだろうか。
誰か、というのはそもそも屋上にいたのだろうか。

私がぐっときたのは、皆から嫌われている樹理が最後の方で暴れるところだった。
彼女を救ったのは間違いなく弁護役の神原であったのだ。
また、ぞくっとしたのは、一巻の冒頭での電器店のおじさんが電話ボックスにいる少年を、この法廷で指差した場面だった。
また一番心に残ったのは、ある人間の吐露の叫びだった。
なぜこのようなことが起こったのか。
なぜこれがこうなったのか。
そしてまた、裁判員達が最後に出した結論、というのにもまたどきっとした。

人間像が浮かび上がるようにどの人間も生き生きと描かれているところが素晴らしい。
これだけの人間が右往左往しているのに、全く混乱せず読ませる筆力に唸った。