2012.11.11 謎007
桜庭一樹選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎007 (講談社文庫)桜庭一樹選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎007 (講談社文庫)
(2012/10/16)
不明

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評価 5

大変優れたチョイス作品ばかりで、どれも楽しめた。
この中で、グリーン車の子供は何度読んでも傑作だなあと思う。
出だしの俳優のボヤキから始まって、俳優が新幹線のグリーン車に乗って同じ車両の人たちとの交流からあることが見えてくる・・・という図が一幅の絵画のように目の前に広がってくる。

冒頭の洋服箪笥の奥の暗闇、は得体の知れない部屋、今で言えば事故物件の怖さを箪笥を使ってなんとも味わいのある文章で実に怖く綴られていた。

鳥を見た人、は、いかにも赤江作品らしく、全体に何かの渋い色に染まっているような作品で、子供の存在が忘れがたい余韻になっている。

宅配便の女、は初めて読んだが、非常に面白く読んだ。
最後のところで、どうやってそのトリックを作ったかというのが恐ろしく、そしてあり得ない状況ではなく実際に確かに出来そうだ、というのがとてもとても怖い。

日本早春図、は、伝来伝わっていた貴重な一幅を道楽息子が二束三文の値段で売り飛ばすと言う話が元にありながら、最後のところである一人の男性の物語に収斂されているところが読ませる。

伊集院大介の失敗は、失敗ではあるけれどもそれがどうして失敗とみなしたか、ロマンチックととるべきか、とかそのあたりのゆれ幅が興味深い。

人質カノン、は、これまた何度読んでもコンビニで必ず思い出す一作だ。隠れた名作だと思う。
コンビに強盗にそこにたまたまいた人たちがどういう風に対処するか。
またコンビに強盗が持っていたものから、ある人間の冤罪が晴れると言うことも面白い部分なのだが、それよりも、コンビニそのものがどういう場所なのか、というのが、ここによく出くわす女性と学生の男の子のやり取りで鮮やかに切り取られていた。