カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 1カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 1
(2012/12/01)
J.K.ローリング

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カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 2
(2012/12/01)
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評価 4

家族がたくさん出てきて、その中の問題が噴出するように出てくる物語だ。
この話の中で、一番良い人で一番良識がありそうな人が何しろ一番最初に死亡してしまうので、その亡霊のようなものにみんながとらわれている。
小さな町なのでお互いを良く知っている。
知りすぎるくらいに知っている。
これがドラマのデスパレートな妻たちのような雰囲気も漂っていた。
しかしこの物語は、現代の社会問題(ネグレクト、子供の犯行、子供の不純異性交遊、富裕層と低所得者層の地域の問題、親からの虐待、薬の蔓延、肥満などの健康問題、欝、家庭内暴力)がふんだんに盛り込まれていたと思う。

入っていた紙にこの家族の関係と家族構成の紙が入っているが、出来たら役職とかも軽く書いておいて欲しかった(別枠で)
何しろこれだけの家族が錯綜すると、話に引き込まれはするが、混乱もする。
私は一覧表を(家族の経歴とか性格とか)を作ったけれどたまにそれを見ないと下巻まではかなり大変だった。

大人の部分の物語とそれぞれの子供達の物語に分かれているようで、それが渾然としている部分もある。
大人は、突然死したバリーの議員後釜を狙って数人が立候補しようとするのだが、それぞれ弱みがある。
そしてネットからバリー・フェアブラザーの幽霊からという中傷の話が数個アップされて、町は大騒動になっていくのだ。

・・・
この中で、一番かわいそうなのは、クリスタルだ。
せっかくボート競技で見出してもらった矢先、その人間が死んでしまう。
家では、薬漬けで男が変わるどうしようもない母がいて、頼りのキャス婆ちゃんは死んでしまう。
自分の幼い弟を見るのは16歳のクリスタルになってしまうのだ。
更に母の男が・・・・
そして学校で男子と・・・・
学校で問題児とされているクリスタルの必死にけなげに生きていく姿がなんだか痛々しい。

またインド系の優秀な家庭に生まれ彼女自身は優秀ではなかったがために、自分に強烈なコンプレックスを持っていて自殺未遂を繰り返すスクヴィンダーもまた哀れだ。
ファッツにフェイスブックで馬鹿にされ嫌われ、そしてガイアという美しい友達を持つところでちょっと救われる。
最後、この少女がしたことがこの話全体の救いにもなっている。

ガイアはガイアで、ロンドンから片田舎に突然つれてこられたのは、ソーシャルケアをしていた母のケイの男のためだった。
それなのにその男ギャヴィンは優柔不断な男であった。
常に苛立ちにとらわれているガイア。
美しいがゆえに人目は引くが、家では母に反抗しギャヴィンに噛み付く少女でもあった。

ファッツは徹底的に父に反抗している。
先端恐怖症であり、なぜ父に反抗しているか、彼が後半で取った行動というのが何かというのがあとになってわかってうるのだ。

そのファッツののんびりとした(と見える)両親を羨ましがっているのがファッツの親友のアンドルーだ。
両親に徹底的に反抗している。
サイモンは独善的であり、家庭内では絶対の権力を持っていて、暴力も辞さない。

モリソン一家は子供関係はあまり出てこないが、ここは町の権力者っぽいハワード・モリソンとその妻シャーリーがいて、息子の嫁のサマンサの独白が大変率直で面白かった。
姑への不満、夫への不満、ひいては嫁ぎ先の家への違和感・・・・7

しかし・・・
この話、ラストこれでいいのか。
救いになるのだろうか。
私から見ると暗黒の終わり方にしか見えなかったのだが。


以下ネタバレ

・アンドルーは父への反抗から
彼が盗品のコンピューターを持ってること、印刷工場で勝手に内職をしていたことをネットにアップする。

・ファッツは養子だった。
父は鬱病であり、自分が何かをしでかしてしまう、小児愛ではないかというのに常におびえていると言うのを知っている。なので反抗心からそのことをアップする。

・自傷を繰り返すスクヴィンダーは、話を聞いてくれない医者の母パーミンダーに苛立ち、
彼女が議員であった時に死んだバリーに恋をしていた、とネットにアップする。
(彼女はラストで、クリスタルの弟が(結果的には死んでしまうが)おぼれそうになった時に助けようと飛び込み、一躍ヒロインになる)

・ファッツとクリスタルが交わっている間に、置き去りにされたクリスタルの弟は溺死。
クリスタルはそのあと自死。
なんて真っ暗なんだろう・・・