2013.02.25 孤児の物語
孤児の物語 I (夜の庭園にて) (海外文学セレクション)孤児の物語 I (夜の庭園にて) (海外文学セレクション)
(2013/01/29)
キャサリン・M・ヴァレンテ

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評価 5

めくるめく入れ子状態の物語。
大変面白かった。
毎晩この話を聞いては去っていく(なんせこの所業を姉上に怒られる運命のスルタンの息子)、毎晩話が途中で終わる、というように千夜一夜物語をどうしたって思い出すだろう。
加えて、ある人の話をしているうちに、その中のある人が別の話しを話し始め、またその人が別の人の話を語り始める、というように入れ子構造になっているのも千夜一夜物語だろう。
が、この話、独特の世界観を持っている。
独特と言うより、奇怪といっていいかもしれない。
この世界の成り立ちが馬から出来上がっている、というのが既に異常事態であって、また最初の部分で(一番外枠の次の外枠と言うべき話)いきなり娘を殺す(この娘もあとで何者かというのが意外な展開がある)という残虐なシーンも出てくる、いくら鵞鳥に見えたとはいえ。

後書きにもあるけれど、話が複雑な構造で、(あ、この人はさっき出てきた?)とか(この動物はもしかしてあの人?)とか繰り返しが多く、そして変身譚も多種多様である。
一つの話を別々の人が語ると、別の側面が出てくるのだなあというのも随所で思った。

いきなり飲み屋の主人が自分は熊であったと語る熊話もラストで見事に呼応している。
男の熊側から見るあるひとつの物語。
女の熊側から見るあるひとつの物語。
それぞれが語られる。
黄金を持つ(しかし絶滅状態の)グリフィン、彼らと対峙している単眼族(最初は二つの種族が持ちつ持たれつだった。グリフィンはおなかがすいていて単眼族の馬が欲しいし、単眼は馬の代わりに眼に埋める黄金が欲しい。だったが、グリフィンの黄金を取りすぎ、単眼が均衡を破った)。
一本足と、イー族との対立。
このあたりも非常に読ませるのだ。

また、「皮」というのもかなり大きなモチーフとして語られている。
人間の皮を剥いで、それをかぶって別のものに成りすます話、というのがやはり一種の変身譚でもあるだろう。
ホルムンクスが皮をかぶっていく話という部分もとても面白い。

また、導かれるように王子がやってきたある鵞鳥を操る女性と王子の関係性、また殺した鵞鳥と自分との関係性(鵞鳥は人間女性が変身していた)、も興味深い。
因果の話と言ってもいいだろう。


一番の外枠話は、あるスルタンの宮殿に住んでいる魔物と言われる女童がいる。
彼女は魔物ゆえに庭で惨めな生活をしているのだが、ここにスルタンの息子が一人訪ねてくる。
そして女童の目(まぶた)に精霊によって描かれた物語を女童は語り始めるのだった・・・・・