2013.03.26 密室蒐集家
密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)
(2012/10/18)
大山 誠一郎

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評価 5

本格ミステリにそれほどこだわりがない私でも、この作品は非常に面白かった。
連作集だがどこにも「密室蒐集家」が出てくる。
ここがファンタジーのような感じで、時を越えて同じスタイルで密室があるとぽいっと出てくる密室蒐集家という存在が快刀乱麻で密室の謎解きをする。
どの作品もある種の出来事で密室が出来上がったということで真相が誰もわからないのだ。
そこに密室蒐集家の登場と相成る。

・・・
この作品で面白いと思う一つは、時代が戦前から追っていくというところだと思う。
そしてその時代性がミステリに大いに関係している。
例えば、テレビがまだ街頭テレビだった時代は、今のようにすぐにテレビから情報がもらえない(ので、あることに気づかない)。
ここも大きく関係している。
またパソコンがまだない時代は、フロッピーディスクだったなとここも懐かしく思い出す。

特に面白いと思ったのは、少年と少女の密室だった。
これは完全に私も騙された。
一つだけならともかく二つが同時にと言うところが・・・・
そしてここから犯人が特定されるというのも大変面白い(この作品が、今の時代だったらテレビと言うことになる作品)

佳也子の屋根に雪ふりつむ、は、三好達治の詩をモチーフに、自殺を図った女性が助けられた雪の日の病室というシチュエーションがあとで光ってくる好短篇だと思う。
自分に優しくしてくれた医者は誰だったのか。
そして自分を心配して来てくれた親友への想いなど、読み終わった後にも余韻が残る。

死者はなぜ落ちる、は、これまた全くわからなかった。
上から落ちる女性を二人の人間が見ているわけだから、もうこれは間違いがないと思うだろう、誰しも。

柳の園、はクイーンの作品を呼んでいるだけで非難されるようなそんなお嬢さん学校に通っている1937年の時代の話だ。
自分が学校内に置きっぱなしにした本をとりにいったがために、音楽教師が殺害される現場を見てしまう少女・・・
この少女が後半の作品で(理由ありの密室)お婆さんになって出てくるところも感慨深い。

理由ありの密室は論理で色々な可能性を考えていって、それを一つ一つつぶしていって、最後にいきつくところが面白い。

以下ネタバレ
・少年と少女の密室、では
真澄と言う名前と薫と言う名前が
男女どちらにでも当てはまるというトリックが素晴らしいと思った。
これがどちらかだけなら、気づくのだが。
しかも最初の場面で、少年が少女の方の名前を言うのでここが大きな目くらましになる、と同時にこれを聞いているのはタクシー運転手と刑事だけなので、おのずとタクシー運転手が犯人と最終的に決定付けれられる証拠になる。

・佳也子の屋根に雪ふりつむ、では、
日付トリックが使われていて、最初自殺を図った女性が起きた時から、嘘を教えられればこれはもうどうしようもないだろう、何しろ寝ているだけだから確かめようがないだろう、と言うところがリアルだ。

・死者はなぜ落ちる、では、
一見、良い結婚をしようとしているのに昔の彼に脅迫されている可哀想な画家の女性、と思っていて
どちらかというと、途中まで犯人はこの昔の彼、ぐらいに私は思っていた。
が、実はこの画家の女性が、というところに驚いた。
画家と言うのも意味があって、上の女性(麻美)の不始末から絵を上から部屋の水で濡らされたということだった。
しかも最初の場面で浴室でばらばらにしようとしていたというのが後半でわかる。
ここの描写を最初読んでいる限りでは、お風呂に入ってシャワーでも浴びている女性(優子)、としか見えないというところも見事だ。
死体の入れ替えというトリックもまた目を見張る。
麻美は松下と言う女性を身を乗り出させることによって殺した。
麻美は優子に殺された。
松下の死体は、優子のアリバイに使われた。