キャサリン・カーの終わりなき旅 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)キャサリン・カーの終わりなき旅 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2013/02/08)
トマス・H. クック

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評価 4.9

クック作品で異色作だと思う。
が、とても重層的な話で非常に面白く読んだ。
どうだったんだ、というのを人と話し合いたい作品であるとも思った、ミステリとしてではなく幻想小説のようなものの類として。

息子を何者かに殺されて絶望の淵を漂っている新聞記者ジョージ。
彼がある日、20年前に小説を書いたまま失踪した詩人キャサリン・カーという女性を知る。
その小説を読んでみるのと同時くらいに、早老症の少女アリスと知り合うのだ。
そしてアリスもその小説を知りたがり、二人で捜査をしていくうちに・・・・


詩人の運命はどうなったのか。
彼女は自分の意思で消えていったのか。

アリスは、病気で動けないのでパソコンでこの謎に立ち向かっていく。
ジョージはいかにも新聞記者らしく自分の足でこの謎を解き明かそうとする。
何重もの入れ子構造の作品になっている。
ジョージがアリスのか細い手を自分の息子が差し伸べた手と思ってしまう部分など、現実の出来事もあるのだが、途中から幻想的な部分が際立ってくる。
ミステリとして謎解きというのを求めると違う作品なのだろう。
でも読んでいる間は、次はどうなると言う興味が尽きなかったと言うのもまた事実なのだ。

・・・
冒頭のところとラスト部分の繋がりが非常に興味深い。
なぜなら、「船で旅している『私』がいて、ある話をマヤワティという男性にしている」
と言う設定になっているのだ。
これが一番外枠の話だ。

次の章から、中身の枠になり、上に書いたようなジョージと早老症の少女の物語が始まるが、途中で、船の部分も出てくる。
マヤワティという聞き手の男性が、こうじゃないか?という見解などを出すのだ。

また中身の枠の中にもう一つの枠の話があり
ここには、キャサリン・カーが書いた話、というのが出てくる。
これが、キャサリンが実際に出会った事件なのか、それともただの小説なのかは読者の判断に任せられる。
(が、この小説の主人公は、キャサリンらしいとアリスもジョージもめぼしをつける)
ともかくも、キャサリンらしき女性がマルドローと言う男性に会った話なのだ。
マルドローは師と呼ばれる男がいる。
そして連続殺人鬼の仕業をキャサリンは見せられ、そして訓練までさせられる。
一体、マルドローは?キャサリンは?
そしてこの話は実際のキャサリンとどうかかわってくるのだろうか。

テディと言う息子が失踪した時に見かけた黄色いレインコートが鮮やかに心に残り、そしてこれが最後まで読者を引きずりまわす。
そしてラストが忘れられない。