2013.04.11 神の手
神の手 (集英社文庫)神の手 (集英社文庫)
(2004/04/21)
望月 諒子

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評価 4.9

出だしがもう魅力的なことこの上ない。
なぜなら
『ある小説誌の編集長の元に一本の電話が。
それは見知らぬ男性医師からの電話で、高岡真紀という女性を知っているかと言う電話だった。
この女性は知らないと思ったのだが、男性医師が『緑の猿』と言う言葉を出した所から驚愕が始まる。
なぜならそれはかつての知り合い、来生恭子の作品名だからだ。
高岡真紀から来生恭子が書いたと思しき小説が送られてくる。

しかも会ってみると高岡真紀は全く来生恭子と違うのに、同じ仕草、同じことを話すと言う奇妙さがあった・・・』
という奇妙な謎がどんと提示されているからだ。

しかもこの来生恭子は三年前に消息不明になっている女性だ。
一体この高岡真紀というのは、何者なのだろう。
そして男性医師との絡みは何なのだろう。

誰だかわからない人が自分の知っている人(しかもわけありっぽいのが冒頭からわかる)に至極ある部分似ていて、しかも小説を持っているという謎が素敵過ぎる。
編集者の三村の動転振りが非常に印象的で、読者も巻き込まれながらこの話に引きずり込まれていく。
更に、これらの謎、とともに、この小説で大きな役割を果たしているのは、『小説を書くこと』自体の不気味さということだ。
この魔力に取り付かれて、各出版社を大量の原稿用紙とともに歩き回る来生恭子の若き日々がなんだか泣けるのだ。
彼女の若い日の姿が、色々な視点で物語られる。
小説を書くということ、なんとかして世に出たいという思いが私の胸を打った。
1000枚もの原稿を持ち歩く女性、そして飛び込みで出版社をめぐる女性。
それは鬼気迫るものがあるのだが、彼女の切実な気持ちと言うのもまたそこから伝わってくる。

・・・
この話、ラストの方で真相がわかった時に、やや(そうだろうなあ・・・)という案外予想範囲内の終結がある。
そこがミステリとしてちょっと惜しいなあと思う。
クライマックスのところであと一ひねりあったら、更に更に面白くなったのだと思う。