2013.05.03 美人薄命
美人薄命美人薄命
(2013/03/20)
深水 黎一郎

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評価 5

この「騙し」の感覚って、人によって受け取り方がさまざまだろうなあと思った。
私は非常に面白かったし、ラストの本当の本当のところ、なんて危うく涙をこぼす所だった。

若い男子大学生が自分の単位目当てにあるボランティア活動をする。
それはお年寄りに心のこもった手作り弁当を届けると言う仕事だった・・・・・

一見、これって、この間読んだロスト・ケアの世界?とか思う。
同じ介護系の話だから。
でも大きく違うのはこの作品は、別に現代の介護制度が何とかとか、これからの日本の行く末が何とかとか、そこに焦点は当たってないのだ(多少は話に出てくるけれど)

それよりも
・本文中にもあるように、老人に対して無意識に私達が思っている感情
・老人の過去を考える時に無意識に想像する想像の限界
・ある一つの事がでたらめである場合、全てを否定したくなると言う人間のサガ
・大きなミスリーディングの仕掛け
このあたりが読みどころだと思う。
中でも内海カエという隻眼の老婆の一生、ということに焦点が当てられる。

冒頭、綿々と辛い辛い嫁の話が出てくる。
途中で芽が痛くなる場面も出てくる。
ここが最後の方でとても重要になってきたというところもすごいと思った。

またこの主人公の語り手の磯田総司君が、すがすがしいのだ。
憎めないし、こういう若者いそうだなあ・・・そして最初は軽薄な男!と思ってるのに案外いい奴だなあ・・・・と読み手に思わせてくれるようなキャラクター作りがとても上手だ。
昔可愛かった同級生の女の子に偶然お弁当の場所で再会して、くらっとくるけれどその後・・・と言う場面もちょっと笑えたのだった。

最後、とても切ない。
切ない場面が来るなんてその直前まで思いもよらなかった(というところも面白い)

以下ネタバレ
・この隻眼の老婆の物語は全て作り話だった。
彼女は別にいじめられていた嫁でもなく、いそじという婚約者もいなかった。
いそじは結婚していて奥さんが身ごもっていたわけだから。

・目をいためた理由も、
嫁として薪を割っていたときに破片が飛び込んだわけではなく、先天性のものだった。

・いそじの出征場面も妄想。



と思っていたのだが

実は
ここは最後にどんでん返しがあって
・出征場面のみ本当。
カエのみながらず、いそじもカエのことを好きだった。
いそじの辞世の句にそのことが織り込まれていた(というのを戦没者博物館のいそじの紙を見て、現代の青年が気づくのだった。
だから出征場面で、いそじがカエを見たのは本当(ここはカエ婆さんの妄想ではなかった)。
が、相思相愛だったことをカエは知らずに死んでいってしまった。