ビッグ・ドライバー (文春文庫)ビッグ・ドライバー (文春文庫)
(2013/04/10)
スティーヴン キング

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評価 5

これ、カタルシスがあるホラーと言っていいのだろうか?
きっといけないのだろう、だって最初の話は、レイプされているのは事実だし、後半の話は、あることをしているのは事実だし。
それなのに、すかっとするのだ。
そして恐ろしく怖い。
目を瞑りたくなるくらいに怖い。
そしてとても面白い。

最初の話は、講演の帰りに道端で大きな男(ビッグ・ドライバー)に捕まって暴行されあと一歩で殺される寸前だった女流作家テス、の話だ。
もう暴行されたあと暗渠に突っ込まれるところなど凄惨で容赦がない。
色で言えば真っ黒になっている。
彼女がどうやってそこから帰宅していったか。
どうやってもう一度立ち上がったのか。
それが実に鮮やかに描かれていて、更に、彼女がどうやってビッグドライバーに行き着くか、行き着いた先には、ある姦計があったこと、別の人物が関わっていたこと、その人物との直接の攻防(まさに死ぬか生きるかの攻防・ここがとても男らしくて素敵、テス!)、最後のまずい、と思ったことで再び会いに行く一人の女性の真実(美しい目の真実がとても驚きに満ちているし、この場面美しい)が目を見張る。
彼女はこういう役割で出ていたのか。
彼女の声と猫の声(これは彼女の想像の声である)が交互に話し合うところも不気味であり圧巻だ。

次の話は、普通に平凡に生きている主婦が、地下室でふと夫が殺人鬼であることに気づいてしまう、そして夫にも気づかれてしまう、と言う物語だ。
この話、読んでいると、自分もこの主婦の気持ちにシンクロして、
(嘘だろう・・・嘘であってくれ・・・)
(私の勘違いで、笑いを取るものであってくれ・・・)
と願ってしまう。
しかし現実は甘くなく、夫自信がそれをあっさり認めてしまうのだ。
主婦は自分の子供もいるし(息子は起業したばかり、娘は結婚間近)、自分のこともあり、夫を警察に出すことも出来ない。
ここらも痛いほどわかった。
そして彼女のとった行動、更に、それで終らず、そこから一人の人間が訪ねてきて、彼女の耳元でささやいた一つの言葉・・・
ぞくそくしながらも、大変面白く読んだのだった。