2013.06.02 コリーニ事件
コリーニ事件コリーニ事件
(2013/04/11)
フェルディナント・フォン・シーラッハ

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評価 5

短篇のみならず長編のこの作品も大変良かった。
この物語、冒頭からコリーニが殺人事件の犯人であり、よしんば殺していなくても(そこは詳細には書かれていない。拳銃を置いたのはコリーニだが、間違いなく彼が最初から握って殺したとは書いていない)、死んだ相手の顔を何度も蹴飛ばす行為、というのは描かれているわけで、コリーニが猛烈な悪意を殺された側の男性に抱いているというのは間違いないというのがわかる。
なぜだろう?というのがまずこの小説の話の骨子となる。
つまりは動機だ。
ここまで殺す必要がなぜあったのだろうか。

そして弁護人がつくのだが、彼は初めての事件でしかもあとでわかったことには、殺された男性ハンスは弁護人ライネンの幼い時の親友の祖父であった。
更に、親友の姉とライネンは付き合っている・・・

・・・・
なぜ殺したのか、というのは、この状況を途中まで読んでいくとうっすらと見当がつくだろう、この作品がどこの国の作品であり、その国がどういう歴史を抱えていたかということを鑑みれば。
この作者が巧いのはそこからなのだ。
淡々と、ある意味飄々と言ってもいいくらいに事実を書き記しているのだが、実に痛ましい。
最初の彼の顔を蹴飛ばす行為が途中で痛いほどわかってくる。
話の構造そのものも書き方もシンプルなのにこれだけこちらに重いものを落としてくれるというのが並みの技ではない。

そして、非常に面白いのは
向こう側の辣腕弁護士と新米弁護士との法廷対決だ。
緊迫している上に、新たな思ってもみなかった重要な人間が現れる。
そして圧巻は法律の落とし穴をめぐってのあることが声高に言われる場面だった。

実際にこの法律があるというのにも驚いたが、この小説がきっかけとなって新しい委員会が出来たという最後の解説にも驚かされた。