2013.10.02
11/22/63 上11/22/63 上
(2013/09/13)
スティーヴン キング

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(2013/09/13)
スティーヴン キング

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評価 5(飛びぬけ)

とてもとても良かった!
久々にラスト落涙しそうになった。

タイムトラベルの話だ。
それも、
「ケネディ大統領暗殺を止め、そのあと起こった悲惨な世界の出来事を食い止める」
という使命を持った男の話だ。
この物語は、タイムトラベルの物語でもあるけれど、愛の物語でもあると思った。
それも深く果てしない愛の物語であると。

・・・・
タイムトラベルの話というのは基盤づくりが難しいと思う。
そこが嘘っぽいと全てがまやかしに見えるからだ。
読者をいかに酔わせるか、読者をいかにこの世界に取り込むか。
そこらをさすがにキングは熟知していると思う。
なぜなら、
・タイムトラベルに行く方法(知り合いのアルが教えてくれたという絶妙な滑り出し。しかもアルは不治の病にかかっていてもう死ぬ寸前だ)
・タイムトラベルに行く必然性(ケネディもだが、身近なところで主人公ジェイクは小さい頃の父親の暴力で悲惨な幼児体験を持つハイスクールの校務員ハリーの運命も変えたいと思っていた)
・タイムトラベルの向こうから帰ってくる方法(アルのダイナーの奥にある食品庫から行ける。向こうでもその地点から帰れる)
・タイムトラベルに何度行けるのか(何度でも行けるが、そのたび自分は年をとっていて、向こうでは自分のことを全て忘れられている)
・タイムトラベル中には自分は年をとるのだろうか(とる)

・行った先の時点(1958年9月9日)
・帰ってきた時の時点(現実では2分しかたっていないと何度も書かれている)

・・・・
行った先から、本格的に過去に住む前に実はジェイクは二回帰ってきている。
最初は、半信半疑でただただアルの言うままに行ったという第一回目、
次は、ハリーの暴力的父親から、なんとかハリーの家族を助け殺人から逃れさせるために父自身を殺すはずなのだがここに妹の敵討ちの男性が加わってしまう)の第二回目。

アル自身の状況が変わってしまうのでここで本格的に過去に住むことになる主人公が、実際にそこで生きて行くために、かつてやっていたハイスクールの先生をしていく、というのもとても秀逸な設定だと思った。
技術者とか、別の特殊な職業だと何かと面倒だが、基本先生というのは未来も過去もさほど変わらない人間相手のことだ。
しかもそこで優秀な先生になっていくあたりも読んでいてわくわくした。

学校の劇である少年の才能を見出したり、不慮の事故で顔を怪我した少女の手術費用を抜群のアイディアで募ったり・・・こうしてなくてはならない人物になって行く。
このあたりが、「ケネディ暗殺の5年前」に戻っている意味があるといえよう。
これがもしケネディ暗殺のすぐに近くの時点だったら、犯人のオズワルドの探りもできないし、単独犯かどうかも確かめようがない。
犯人オズワルドを殺せば、本当に暗殺はとめられるのかというのが不安定な以上、オズワルドを殺害はできない。

更にセイディーが出てきてから、彼女とかかわりを持ち、ダンスシーンの美しいことといったら!
愛すべきセイディーは何かによくつまずくというのも笑いながら読んでいたが、これまたラストでとても重要なことになった(ダンスもまた)

セイディーの元の夫に追い掛け回されているさまもまた怖い。
そして、オズワルドを一方で探って行かなければならないジェイクもまたいるのだ。
二重生活をしているわけだが、ジレンマもまた垣間見れる、もしかしてこのまま静かにここで終えても良いのではないか、と、読者にも思わせるジェイクの幸せなひと時だ。
が、人類の幸せのために、彼は自分自身を犠牲にしようと、オズワルドの動向を伺おうとするのだ。


過去が過去の改変を邪魔をするというのがとてもわかった。
大きな事が起ころうとするとそこで修正の力が加わっていく。
だからジェイクがケネディ暗殺という大きな改変を加えようとするととんでもないことが次々に起こるのだった。

ラスト、屈指の美しい泣ける場面で終わる。
この数十ページ前に私はいったんこの物語を置いてどういうラストにするんだろう、と考えてみた。
私の想像をはるかに超える物悲しくも切なく美しいラストだった。

以下ネタバレ
・ケネディ暗殺で、セイディーは死んでしまう。
オズワルドも死ぬ。
このラストを受け、なんとかセイディーを生かしたいとジェイクは現在に戻るのだが。
そこで見たものは「ケネディの暗殺がなかった荒廃したどうしようもない世界」だった。
・これを元に戻すには、自分がもう一度過去に行くしかない。
更にあわよくばセイディーと結婚したいと思うのだが・・・・
・イエローマン(現在と過去の間にいる門番)は、来てすぐに帰るようにしたがる(当然世界をそのままにしたいから)
・しかしジェイクは煩悶する、もし戻ったら世界は変わらないが、自分は二度とセイディーに会えないのだと。
でもセイディーは生きているという可能性が広がる。

・ジェイクは自分を棄てて、セイディーをとるのだ。
そして、未来(という名の現在)、「おばあさんになったセイディー」を見出し、美しいダンスを踊るのだった。