2013.10.21 死神の浮力
死神の浮力死神の浮力
(2013/07/30)
伊坂 幸太郎

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評価 4.5

大好きな死神千葉の話なのだが・・・・

今回短編ではなく長編になっている。
死神千葉のずれた感じ、すっとんきょうな会話(なんせたくさんの時代を「本当に」生きている)、素手で触ったらいけないので常に手袋をしている、彼がいると雨模様の日が続く、更には何をされても死なない(死神だから)、音楽が大好き、というのは前作と共通点だ。
今回、話が、「子供を誘拐殺人された夫婦」を軸に話が進んでいく。

面白い。
会話もやっぱり面白いし、警句が、渡辺一夫だったりカントだったりパスカルだったり、そういうところすら面白い。
山野部夫妻との奇妙な交流で、二人がだんだん癒されて行くというのも目に焼きついていく。
そして、間に入っている、25人に1人の割合でのサイコパスの話とかそこもまたぐっとつかまれる話だ。

なのだが。
全体にうっすらと不快感が漂い、全体の軽妙な雰囲気とちぐはぐだなあ・・・と思うのは、子供が死んだという事実だ。
もうこれがあるために、山野辺夫妻がいかに話しても、千葉がどういう会話をしても、どうしても子供が死んだという補いようのない事実に打ちのめされる。
だから夫妻がこれだけ会話ができるということすら不自然に見えてしまうのだ、いくら復讐心に燃えていてそれが生きる張り合いになったとしても。
もっともっと陰惨な気持ちになっていると思うので、千葉と軽口を叩き合う姿が違和感があるのだ。

そのあたりがとても私には惜しいと思った箇所だった。