安部公房とわたし安部公房とわたし
(2013/07/31)
山口 果林

商品詳細を見る


評価 4.4

実に複雑な感情を持った。
安部公房という人となりを知るのには重要な証言だし、また(この作品はこういう背景の下に作られたのか!)という作品周辺のことも知ることが出来たのは収穫であった。
なのに一方で
(これは暴露本?)
と言う思いもかすかに胸を騒がせる。
特に最初のところに、自分のヌード写真を載せると言うのにいたっては、時間がたったとはいえこういうものなのか。
奥さんとの確執も、演劇の場面、また最初に語られ後半にも繰り返し語られる安部公房の最後の場面、パーティーの場面、病院の場面、と出てくるのだが、これまた胸痛む。
痛むのは、これが山口側からの一方的な話だからだ。
もし奥さんが生きていたら、別の側面があったのだろうなあというのを思ってしまうからだ。

また二人の秘め事のような感覚はもうないのだろうか。
まだまだ語られていないことはあるのだろうが、それでももうこんなに出し尽くしてしまうのだろうか。

そしてまた一方で、彼女が安部公房を亡くし、母親を亡くし、そして仲介に立ってくれた出版社の重要な人を亡くし、と続けざまに人を亡くしているのは本当に痛ましい。
辛い時間だっただろうなあと思った。