2013.11.13 鳥少年
鳥少年 (創元推理文庫)鳥少年 (創元推理文庫)
(2013/10/22)
皆川 博子

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評価 5

どこからどこまでも好みの小説ぐんだ。
そもそも、鳥少年が文庫化されたことを寿ぎたい。

冒頭の火焔樹の下で、は、精神病院の絵画治療を受けている青年をめぐっての話だ。
書簡体で始まり終わって行くのだが、人間模様がそこから探れるし、病院関係者がどのように動いているかというのが克明にわかっていくところが大変面白い。
軸は青年なのだが、青年の描写は常に他人からだ。
医者、看護婦、のそれぞれの思惑が、一種の断崖絶壁に青年を追い詰めて行くところが読ませる。

密室遊戯は、最後の文章で驚いた。
一種の覗き見物で、屋根裏の散歩者などを髣髴とさせる。
隣の部屋からふっと隣の部屋の明かりが見えて、そこを覗き見る女性・・・
その孤独な娘が徐々に覗き見た出来事に魅せられていく・・・ここが実に異様であり隠微な雰囲気も醸しだされている。

滝姫は、ある種の危うい男女の仲を保ちながら失踪した男性を田舎に追っていくと、意外な事実が判明する、というぞくっとする閉鎖的な独特な村に住んだ男の感じが如実に出ている。

数ページの鳥少年はなんと印象深い話なのだろう。
鳥の言葉しか話さなくなった少年、それがどのように女性の元にきたのか、そしてどのように女性が「半分」受け入れたのか、というのが読んで行くとじわじわとわかってくる。
異常な泣き声の鳥の声しか出さない少年。
そして大樹の枝枝に無数の少年がとまっている幻視が素晴らしい。