去年の冬、きみと別れ去年の冬、きみと別れ
(2013/09/26)
中村 文則

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評価 4.2

評価がくっきり分かれる小説だと思う。
褒めようと思えば、いくらでも褒められる。
またそうでもない、と思えば、いくらでもそうでもない、と言える。
ミステリの分野と純文学の分野とにまたがった小説ともいえよう。
どうなのだろう。
ミステリとしてすぱっと潔く書いた方が面白かったのではないだろうか。

死刑囚とその物語を書こうとする雑誌記者とのやり取りというので始まる物語だ。
ほどなくなぜこの死刑囚が死刑囚になったかがわかる、それは二人の女性を殺したと言う罪だった。
そしてまた死刑囚は才能を持った特殊な写真家であったのだ。
姉との特殊な関係も出てくる。
雑誌記者は、死刑囚の姉や周辺の人形師など色々な場所をめぐっていく・・・

この物語、思わせぶりっぽいのだ、全体に。
タイトルからしてアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』だろうし、カポーティーの冷血が何度も出てきたり、芥川の地獄変も出てきたり(犯人がした行為が焼死になっているから)、またその他にも姉との思わせぶりな関係、ライターへの思わせぶりな犯人の言葉、人形への異形な愛を持った人たち、最後の毒杯の行方、これらが伏線といえば伏線だが、全体に思わせぶり、に見えてくるのだ。
そのあたりが、純文学に心を残しながら、ミステリ的に書いたというように私には見えた。
最後意外と言えば意外な展開が待っている。
が、ここもミステリ的にいえばわかりづらく、そして純文学的に言えばオッケーなのだろうが・・・

以下ネタバレ

・最初の女性は事故であり殺人ではなかった。

・事故の被害者の恋人だった編集者が復讐しようとする。
そして、今は死刑囚であるカメラマンを標的とする。
またカメラマンの姉を事件そのものにかかわらせようとする。

・二人目の焼死した被害者は、替え玉になっており、カメラマン(死刑囚)の姉だった。

・姉を殺害したのは、編集者。
・担当弁護士もまた姉によって自殺未遂を引き起こしていた怨恨を持つ者だった。