2013.11.27 流星ひとつ
流星ひとつ流星ひとつ
(2013/10/11)
沢木 耕太郎

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評価 4.8

これを書かれた人(つまり藤圭子)の周辺の人の気持ちは私にはわからない。
わからないけれど、仮にこれが許されるとしたら(許可が下りていたというのが有効だったとしたら)、そういう周辺の人の気持ち抜きでは、とても色々なことを考えさせられた。
暴露物とは一線を画していて、若き日の沢木耕太郎、若き日の(引退直前の)藤圭子の二人のやり取りが生々しくこちらに伝わってくる。

全編会話で書かれている。
沢木耕太郎がとりあえずインタビューしている形式なのだが、そこはホテルのバーであり、お酒を飲みながらくつろいでなぜ引退にいたったのかを率直に語っている藤圭子の姿があまりに痛々しい。
しかもその直接の原因がよく声が出なくなるので、喉の手術をしたら前のような声ではなくなった、という大変衝撃的な話だった。
プロとして自分の声が前の声ではないと言う事実に打ちのめされる彼女がいる。
そしてそのことと向き合うのだが、どうやったって治らない声。
それは引っかかりがある声が二度と出ないと言うことだったのだ。
生命線の声を失った(声は出るものの以前のような声ではない)一人の歌手の行方。

また芸能界のあれこれもきわめて生々しい。
頂上に行ったら転落か、別の頂上に行くかしかない、というのは当時はそうだったのだろう。
また彼女の置かれている位置というのもそうだったのだろう。
今だったら、ずいぶん状況は変わっていたのだろうが・・・

別れた夫のこと、両親のこと(特に父親には悲しさ通り越して怒りさえ覚えた)、育ってきた環境のこと、芸能界でお金を使ったこと。
どれも素直に語っている。
そして何より心打たれたのはこれからのことを聞かれ
「英語を勉強したい」
と言っていることだった。
このあとの彼女の軌跡、そして最後を知っているだけにぐっと来るものがあったのだ。