2013.12.04 愛の渇き
評価 4.8

筋がありちゃんとした小説になっている、という驚きがあった、アンナ・カヴァンなのに。
こんな明確な普通の筋と登場人物が、という驚きが。
ただ同時に、出てくる人はエキセントリックであり、心象風景もありえない心象風景であり、悪い夢を見ているようなそんなざわざわした気持ちにさせられる小説でもあった。

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最初の話は、隔絶された城になにやら産婦人科医が招かれ、そこで伯爵夫人が臨月であると言う状況が描かれている。
城自体が不穏な雰囲気に満ち満ちている。
なんとしても病院で産みたい伯爵夫人なのだが、あいにく病院がふさがっている。
けれど、この伯爵夫人は決して産むことに積極的でもなく、わけはわからないものの伯爵との間に軋轢があるようだ。
更にこの城の従者たちが次々に解雇されていく。
このはざまに挟まって、産婦人科医はあれこれ画策しているうちに、夫人に心惹かれていく・・・

ここから話が始まって
・この伯爵夫人が産み落とした子供が、別の若い女性に引き取られ、そこで育てられるように産婦人科医に手配される。
・産婦人科医は結局伯爵夫人と一緒になるのだが、そのあと子供の行方を追ってく
・子供は今度は伯爵夫人の新たな恋人が出来たのでそこに引き取られていく
・子供の(娘)ガーダの話
伯爵夫人に精神的に虐待されている
・ガーダの恋愛そして落ち込み
・そしてまた伯爵夫人に戻り、逃れようと思っても逃れられない新しい男の物語
となっている。

ガーダの一瞬幸せと思えた状況が、夫とやむなく病気のため離れて暮らすうちに異様な状況になっていくところなどとても心に残る。
触れられるのが嫌、営みが嫌、しかし自分の美には異常なまでに神経質な伯爵夫人の傲岸さが、最後「老い」ということで崩壊していくさまも非常に怖かった。