2013.12.09 殺人者の湿地
殺人者の湿地 (論創海外ミステリ)殺人者の湿地 (論創海外ミステリ)
(2013/09)
アンドリュウ ガーヴ

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評価 4.9

アンドリュウ・ガーヴがこれを読んで改めて好きなんだな私は、と思ったのだった。
非常に話はシンプルで、登場人物も少ない。
これだけ少なくて話が面白くなれるのだろうかと思うほどに少ない。
更に、倒叙物なので、もう最初から犯人はわかっている。
どこに殺したかであろうというのまで目星がついていて、プラス方法まで想像がついている。
殺人の動機、というのも、金持ちの女性と婚約しているのに別の女性に手を出し妊娠させたという、実に「ありそうな話」から来る動機である。
それなのに、面白さが全く減じることがないのは、犯人の企みが非常に深いからだ。
また、刑事があることに気づいておかしい、と探っていくのだが、その「あること」が実に単純であるのに納得が出来る「あること」なのだ。

一部はこれで終わりというくらいにあっさりした終わり方になっている。
一部の最後で、ある一行がある。
これまた、読者に対する目くらましになっている。

一夜の情事でうぶな娘を妊娠させてしまって、その娘がなんと自分のでたらめの住所ではなく本当の住所の元を訪ねてきたときの男の驚きと言ったらどうだろう。
このあたりの戸惑い、そして立ち直り、根っからの悪人という設定がとても巧く機能していた。

超絶技巧など施さなくても、こんなミステリがかけるのだ、と思ったのだった。


以下ネタバレ
・一部の最後で「不安は的中した」とある。
これで、読者は、綿密な殺人計画が、ある人間に目撃されたことで崩れると2章を読みながら思う。
殺人をしたような気配の男を見た(しかも犯人を特定している)という匿名の通報から、警察は、湿地の中を捜しまくるが、そこには死体が一向にない。
どうしたって、娘がやってきて彼女を疎ましく思っているだろう青年ハントが怪しいのだが、彼は滔々と持論を繰り返すのみだ。
彼は彼女を彼女の自宅まで送っていてしかも目撃証言まで出てくる。

しかしこの話の真実は
「彼は殺していなかった、彼女はちゃっかりと生きていた」
と言うことだったのだ。
そして全ての容疑が晴れ、娘が勝手にどこかに出て行ったのだ、と警察が思い無罪放免になったハントはそこでようやく娘を殺害しようとするのだった。

・警察が気づいた一つの穴は、
「菊の花」だった。
これを金持ちの婚約者に送るので買った、と言うハントに対し違和感を持つ警察。
その違和感は婚約者の家の広大な庭園に菊が咲き乱れているのを思い出したからであった。
ありえない、そこに菊を持っていくのは。
とすると、その菊は、「まだ生きている妊娠した娘」のためだろうと推測する。