2014.01.12 秘密
秘密<上>秘密<上>
(2013/12/21)
ケイト・モートン

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秘密<下>秘密<下>
(2013/12/21)
ケイト・モートン

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評価 5(飛びぬけ)

最初から最後までテンションの途切れることなく、わくわくしながら読んだ。
一旦手に取ったならば、最後まで行かないと止まらない。
家族小説としても面白いのだが、一種の推理小説としても非常に読み応えがある。
折々の自然の描写も美しく、細かい過去の場面が現在に繋がっているところなど本当に美しいし切ない(特に幼いヴィヴィアンがたった一人で川辺で寝てしまう光景など特筆するぐらいに美しい、この時の意味の深さが後でわかると更に美しいのだが)
そして繰り返される場面がいくつかある。
その場面も一回目で想像していた意味と全く違う話になっているところもどきどきする。
更に、なんといってもたどり着いた旅路の果ての最後の驚き(296ページ)と言ったらどうだろう。
私はローレルと同じ思考で母の謎に向かっていったので、ローレルと同じところで驚愕した。
そしてこの部分で、(ああ・・・・そういうことだったのか・・・・)と話全体が見えてきたのだった。

ドロシーがしようとしていたこと、ジミーの心の動き、ヴィヴィアンの家庭状況、このあたりは意外に早い部分でわかる(と思う)
特にヴィヴィアンの家庭状況は、読みなれている人ならば、きっとこうだろうと想像できる。
けれど・・・・・
そしてその驚愕の後の、最後の一章。
ここもまた締めとして最高の締めだと思った。
ここにもまた秘密がある。
秘密にしたい人間、秘密を守り通す人間がここにはいる。
それがあぶり出しのように一人の人間の記憶から浮かび上がってくるさまが素晴らしい。
更に、この秘密は優しい優しい泣けるような秘密なのだ。

ここには様々な秘密が出てくる。
一本の木は、「大きな母の秘密」でありそれをたどっていく娘のうちの一人ローレルの物語でもあるけれど、そこここに小さな秘密がちりばめられている。
それは悪意のある秘密、もあるし、善意の黙っていましょうの秘密もある。
優しい秘密、傷つけてはいけないのでの秘密、人生の根幹を揺るがすような秘密・・・
秘密についてとても考えさせられたのだった。


以下ネタバレ
・一番の驚愕は
ドロシーと思っていた母は、実はヴィヴィアンであったということだった。
ヴィヴィアンは死んでいなかった、爆撃で。
死んだのはドロシーだった。
これを、訪ねていった家の先の写真でローレルは理解する。
ローレルはドロシーの娘ではなくヴィヴィアンの娘だったのだ。

・ローレルは自分の母が訪ねてきた男をナイフで刺し殺したのを偶然目撃してしまう。
なぜその男を母が殺したのか。
そしてなぜその男は母を知っていたのか(言葉が聞こえてきてわかった)
この真相は二転三転する(そして読んでいる側も二転三転の推理をさせられる)が、
実際は、これはヴィヴィアンであって、追ってきたのは元の夫であって、
自分の家族をひどい目に合わすという脅迫を聞いて咄嗟に殺したのだった。

・ドロシーとは、大金持ちの家の老婦人の介護をしている手伝いの美しい娘。
自分に老婦人が遺産を残してくれると妄想していた。
また隣に金持ちの美しい妻ヴィヴィアンが住んでいるが彼女が友達だと妄想していた。
そしてヴィヴィアンがドロシーの野望の邪魔をして老婦人に言いつけ口をしたと思い込んでいる(被害妄想)

・ヴィヴィアンはその隣の金持ちの美しい妻。
金持ちはヴィヴィアン自身であり、彼女は自動車事故で家族全員を亡くしている。
しかもそれは自分が置かれていったときのことなので自分の責任だとどこかで思っている。
彼女は作家の妻であるが、その作家は見えないところで暴力夫であり激烈にヴィヴィアンを家に縛り付けていた。
(というのを知っている人は数少ない)

・ジミーは、ドロシーの恋人でカメラマン。
ドロシーに恋焦がれていたが、結婚を一旦断られる。
しかしそのあとドロシーの誤解により恨まれているヴィヴィアンとのわざとの不倫現場を撮るという所業をさせられそうになる。

・ヴィヴィアンの夫にジミーはテムズ川に沈められ殺される。
と思ったのだが実は生きていた。
そしてジミーは新たな人生を歩みだし、家族を作ったのだった。
そして、死んだのはドロシーだと思っている。
ところが最終章でわかるように、ジミーはローレルの小さい時にドロシーに愛に来ている(その前に新婚時代に遠くから見に来たので、そこで彼女が幸せを掴んだことを納得し、そして自分も結婚したので二人でなごやかに話し合えると思ってきたのだが、そこにある写真は
ヴィヴィアンとその夫だった。
ここで、ジミーは、「死んだのはヴィヴィアンではなくドロシーであって、夫から逃れるためにヴィヴィアンはドロシーの名前を名乗った」ということを知るのであった。
そしてそれを秘密にしたまま静かに去っていく。