2014.01.29 死との約束
死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2004/05/14)
アガサ・クリスティー

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評価 4.8

テレビドラマ版(デヴィッド・スーシェ)を見てあまりに(こういう話じゃなかったぞ・・・)感が強かったので、久々に再読してみた。
結果、話が違う・・・犯人すら違う・・・

この話、難しいのは、「非常に専制的な母がいる」という設定だと思う。
これが子供達に何年にも及び影響していて、子供達がまったくその呪縛から逃れられない。
更にお金を握っているのは母なので、そこから独立することも出来ない。
今の時代だったら考えられない状況なのだと思う、これは。
さっさと逃げ出して、自分でアルバイトでも何でも働いて独立すれば言いだけの話、大人になっているのだから、と思うだろう。
でもきっと当時、ずうっと貴族的な生活をしていて働いたこともなく、しかもこれといった能力もなくて働き口も少ない時代に、ぽんと世間に投げ出されたらこの子供たち(大きい大人だが)は生きていけないだろう。
またテレビではわかりやすいように虐待が体を叩くなどの「肉体的虐待」になっている。
それを見ている子供、されている子供、どちらも非常に傷ついている、だから逃れられないと言う非常にわかりやすい説明だ。
けれど、小説では決して叩いてはいない、殴ってもいない、ただただ口で罵倒し圧制を強いて自分の周りにはべらしている、という設定だ。
小説の方が私にはリアリティーがあると思った、現代の日本であっても精神的に支配して自分の思い通りにしていくというような、同じような事件があったわけだから。

場所が死海という特殊な場所なので、そこもまた小説に華を添える。
また最初にポアロが聞いた「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ」という男女のささやき声があとあとまで捜査を撹乱し、重要なポイントとなる。
加えて、この専制君主のお母さんのボイントン夫人は、誰からも憎まれていたような人物だ。
彼女の過去、そして彼女の一言が決め手となって犯人がわかっていくあたりがとても興味あるところだった(彼女がなぜあの言葉を吐いたのか、それはサラーの率直な外部の言葉にむっとしたからと思っていたが)。

この中でポアロはなかなか出てこない。
最初出てきた(男女の話を盗み聞きする)と思ったら、後半までしばらく出てこないのがちょっと淋しかった。

この小説の中でオリエント急行に言及している登場人物がいるが、一般の人がこれを知っているって違反じゃないのか、とちょっと思った。

以下ネタバレ

・ボイントン夫人が殺されたのは、子供たちの誰か、と子供たち同士も思っているのだが(だからお互い庇いあい面倒なことになっている)、実はボイントン夫人がかつて刑務所の看守をしていてその時に入っていた人間が今は名士(ウェストホルム卿夫人)としてここにいる、というのを見つけたからだった。
そして気づかれた彼女によって殺されている。
サラーの話の時に、ボイントン夫人はその話を聞きながら同時に遠くに、ウェイストホルム卿夫人が何者かというのに気づいたのだった、そして言葉を発したのだった、それに対しての言葉を。
「わたしは決して忘れませんよ。よく覚えておいてね。わたしは何一つ忘れていませんよ、どんな行為も、どんな名前もどんな顔も・・・」→これがウェイストホルム卿夫人が刑務所にいたと言う事実。

・テレビ版では養女をもらっていくボイントン夫人という話になっていたが、これは実の子供と言うことになっている。

・テレビ版ではボイントン夫人の旦那は生きていて、遺跡発掘をしていた。
小説では既に死んでいる。


・テレビ版では長男レノックスの善良な奥さんネイディーンがいない。